以下引用



  福島第一原発の事故では1、3、4号機が水素爆発を起こし、大量の放射性物質が大気中に拡散した。だが、3号機は核爆発だったのではないかとの疑惑がある。実際、3号機が爆発した瞬間には黒煙が舞い上がり、白煙が立ち上った1号機とは様相が違った。



「3号機で核爆発が起きた」と主張する原発技術者は何人かいる。そのなかで最も詳しく解説しているのが、三菱重工業で原発の設計技術者を務めた藤原節男氏(70)だ。



「3号機の爆発では原子炉建屋南側で一瞬オレンジ色に光り、黒いキノコ雲状の煙が上空600メートルまで立ち上りました。これは温度が1万度以上の高温になる核爆発の特徴です。大きな被害が出なかったのは、爆発の規模が原爆の1万分の1から10万分の1程度と小さかったからです」



 藤原氏は3号機が核爆発した証拠として13個の根拠を挙げている。以下が主なものだ。



・屋根フレームの鉄骨が飴細工のように曲がった。爆発で建屋のスレート屋根が吹き飛び、圧力が外部に逃げたにもかかわらず曲がっているのは、核爆発で局所的に超高温部が発生したために起きた現象。



・使用済み燃料プールのある建屋南部を中心に屋根が破壊された。水素爆発なら最上階の5階に充満した水素が爆発するため、屋根はある程度均等に破壊される。



・5階の床付近に置かれていたクレーン用モーターなど大型瓦礫(がれき)がキノコ雲から落下したようだ。5階空間での水素爆発なら、5階の床付近に置かれたものを上空高く吹き飛ばすことはできない。



・プルトニウムが福島県飯舘村や米国まで飛散しているが、これは使用済み燃料プールの燃料の金属成分が蒸発したもの。水素爆発ならプルトニウムの発生源は格納容器内の炉心溶融物(コリウム)に限定されるが、その場合のプルトニウムは二酸化物のままの状態を保っていることから蒸発飛散しない。



・福島第一原発事故では、セシウムを含んだガラス質で、微小な球形をしたセシウムボールができた。これは高温高圧下で物質が蒸気とプラズマになり、冷える過程でできたもの。水素爆発ではできない。



 では、どうして核爆発が起きたのか。藤原氏によると、最初に3号機上部で水素爆発が発生し、それから使用済み燃料プールで核爆発が起きたという。



「まず全ての電源が失われたことで、使用済み燃料を冷やしている燃料プール内の水が沸騰を始めました。このとき、水中のボイド(気泡)が一定量に増えたことで安定した『遅発臨界状態』に達しました。本来、プール内で臨界が起きてはいけませんが、ここまでは原子炉の固有の安全性(自己制御)が機能している状態でした」



 水の中にどれだけの気泡が含まれるかを示すボイド率は、核分裂制御と密接な関係にある。うまく調整できれば安定臨界状態を保つが、少しでも狂うと原子炉が暴走してしまう。このときの使用済み燃料プールも臨界したとはいえ、安定した状態を保っていたという。だが、ここで思いも寄らぬ事態が起きた。



「3号機の5階に大量にたまっていた水素ガスが爆発したことで急激な圧力が使用済み燃料プール水面にかかり、水中のボイドが消滅したのです。急速にボイドが減ると激しい核分裂反応が起き、危険な『即発臨界状態』になる。自己制御が利かなくなり、ついには核爆発が起きたのです」



 使用済み燃料プールの水は本来、燃料の冷却のために使われる。だが、安定して臨界状態を保っていたボイド率が一定以上低下すると、中性子の速度を抑える減速材としての役割が増加し、核分裂を促進してしまう。ほんのわずかな反応度の違いで、即発臨界点に達してしまうのだ。3号機はプルトニウムを再処理で取り出した(プルトニウムとウランを混ぜた)MOX燃料を使う原子炉だったことも、核爆発を起こしやすくしたという。



 一方、こうした核爆発説への異論も少なくない。



 例えば、東京電力が公表した3号機の写真には使用済み燃料プールの燃料ラック(収納棚)が写っている。爆発したのなら残っているはずがないとの見方だ。また、原発で使う核燃料はウラン濃縮度が低いため、核爆発が起きないのではとの指摘もある。



 藤原氏の反論はこうだ。



「核爆発したのは局所的な場所で、被害のない部分を写真として公開しています。また、低濃縮ウランで核爆発が起きないというのは安全神話にすぎず、実際に爆発を起こした実験結果が米国にあります」



 その上で、3号機は水素爆発だと言い続ける東電や政府をこう批判する。



「小規模な核爆発だからといって、事実を隠していいことにはなりません。環境中に放射性物質をまき散らしたのだから、飛散した破損燃料や爆発時の環境中性子線の数値など核爆発の証拠となるデータを明らかにすべきです」



※週刊朝日  2020年3月13日号



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 3号機の核爆発については、直後にアーニー・ガンダーセンが、「即発性核臨界爆発

と分析して公表した。

 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%8B%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%AC%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%BC%E3%82%BB%E3%83%B3



 https://shuusuto-koukazero.hatenadiary.org/entry/20110510/1305042426



 私は、当時からプルサーマルによるプルトニウム240の核暴走と考えていた。しかし、藤原氏もガンダーセンも、自発核分裂による中性子濃度増大リスクをもたらす、プルトニウム240に対して明瞭な判断を与えていない。



 ここに、MOX (プルサーマル) 燃料使用の危険性 - Green Action Japan からの報告書があって、英文で出版されている。

 David Lochbaum Edwin Lyman Susan Q. Stranahan The New Press (2014)

 https://www.goodreads.com/book/show/17290891-fukushima



  http://greenaction-japan.org/internal/150719-21_mox-safety-talk-jp.pdf



 高度の専門性が必要な内容なので、結論だけ抜き書きする。



【 日本の原子炉でのMOX燃料の使用は、安全性を低下させ、不確実性を高める

• 原子力規制委員会はMOX燃料の安全性について情報に基づく決定をするための十分な情報を持っていない

:決定には数多くの実験結果が必要である

• 地層処分場におけるプルトニウムの直接処分は安全かつセキュリティーの確かな形で行うことができる。これは米国で実証されている

• この戦略は、日本自身の余剰プルトニウムの相当量に関して、より安全な処分の道を提供することができる】



 この論文が何を言っているかというと、日本政府も原子炉管理企業も、とりわけ原子力安全委員会は、プルサーマルを安全に運営できるだけの知識も技術も持っていない。核兵器開発を狙って作り出した日本の余剰プルトニウムは、プルサーマルでなく地層処分にせよ。

 と指摘している。欧米の核技術専門家の大半が、人類は、安全なプルサーマル原子炉稼働の水準に達しておらず、不確実性を高めていると認識し、だからこそ、日本以外の国で、危険なプルサーマル稼働は行われていない。



 こうした世界中の専門家のプルサーマル稼働への不信のなかで、東電は福島第一原発3号機でのプルサーマル稼働を強行し、「核爆発」という巨大事故を引き起こしたのだ。

 つまり、3号機核爆発は、起こるべくして起きた事故であり、日本政府は、それを一切反省するどころか、ますます全国の原発に危険なプルサーマルを導入し続けている。



 本来、原子炉級核燃料は「絶対に!核爆発を起こさない」と、鳴り物入りで宣伝し、真っ赤な嘘で塗り固めた安全性を吹聴してきたのだが、3号機の核爆発で、「原子炉核燃料が核爆発を起こす」という、ほとんど誰も予想していなかった事態が起きてしまったので、「原発は核爆発を起こす」という恐ろしい真実が世界に知られてしまった。



 つまり、この3号機爆発が核爆発であることが世界的に認識されたなら、原発の未来を暗黒に塗りつぶす事態なので、未だに、東電も政府も、必死になって「あれは水素爆発だ」と言いくるめ、メディアも無知蒙昧ゆえに騙されているのか、忖度してるのか、それを無視し、追求しようとしない。

 なにせ、共同通信などは、大熊町で事故後一ヶ月で千名近い遺体が放置され、近寄れないほど放射能汚染されていると報道しておきながら、これを勝手に「事後被曝」と決めつけたほど、東電の飼い犬のような忖度姿勢を見せ続けているほどだ。



 なぜ、日本政府がアメリカ核技術専門家の助言「地層処分」を拒否して、超危険なプルサーマル稼働にこだわり続けるのか? といえば、第一号原子炉である東海第一以来、延々と半世紀以上にわたって、核ミサイル原料のプルトニウムを備蓄し続けてきたため、現在は世界最多の46トンという世界最大量のプルトニウム239が貯まってしまって、日本は、「全人類をプルトニウム核爆弾で破滅させたいのか?」という国際的批判に晒されている。

  https://globe.asahi.com/article/12688975



 これを地層処分にしようとすると「トイレなきマンション」の本領発揮で、日本のどこにも受け入れる土地がないのだ。安全な地層も、世界最悪の地殻変動地帯である日本列島にあるわけがない。

 つまり、核開発を進めたのはいいが、「トイレがない」のである。

 だから、結局、六ヶ所村に積み上げるしかないが、世界中が、日本が核ミサイルの製造を行うと考えているので、結局、「プルサーマル平和利用」という超危険な幻想のなかに逃げ出すしかなくなっている。



 そのプルサーマルを拡大すればするほど、川内・伊方・若狭原発群などの加圧式原子炉におけるプルサーマルは、いつでも原子炉を吹き飛ばすほどの核爆発の危険性を比類なく増大させてゆくことになる。

 申請中の、浜岡原発でやれば、今度は南海トラフM9の30m大津波が、浜岡敷地に設置された紙細工障子のような津波防護壁を吹っ飛ばして押し寄せ、フクイチ3号機と同じような核爆発を起こすことになり、中京圏、名古屋圏のご臨終と相成る仕組みだ。



 そもそも世界中が技術的困難によって手を引いたプルサーマルを、受験勉強だけの馬鹿しかいない日本人技術者が安全に運用できるはずがない。

 真面目に管理していれば、決して起きるはずのなかったフクイチ事故を引き起こした、無能下劣、隠蔽体質の東京電力はじめ、日本の核管理者は、いまだに、フクイチ3号機の核爆発さえ理解できていないのだから、やれば必ず同じ事故を引き起こすのだ。



もう一度、私が3号機核爆発の原因と考えたプルトニウム240をおさらいしよう。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%8B%E3%82%A6%E3%83%A0240



【プルトニウム240は、プルトニウム239が中性子を捕獲して生成する。

 中性子捕獲したプルトニウム239の62%から73%は核分裂を起こし、残りがプルトニウム240に変化する。

 核燃料の元素が原子炉に長く留まっているほど、燃料中のプルトニウム240の相対割合は大きくなる。

 核兵器用としては、燃料中のプルトニウム240の割合はできるだけ小さく、通常は全プルトニウムの7%以下に抑える必要がある。

 これは、プルトニウム240は自発的に臨界することがあり、不完全核爆発を起こす恐れがあるからである。

 しかし、90日間程度使用した核燃料を再処理することでこの濃度にすることができる。このような早い燃料サイクルは、民生用の原子力発電のための原子炉では用いられず、兵器製造用の原子炉でのみ用いられる。



 民生用の原子炉では、燃料は70%のプルトニウム239、20%のプルトニウム240と残りはその他の同位体からなり、核兵器製造は技術的には不可能ではないが、非常に困難である。



 プルトニウム240は、プルトニウム239と比べて中性子吸収断面積はわずか3分の1であり、核分裂するよりもプルトニウム241になることが多い。

 一般的には、奇数の原子量を持つ同位体は中性子を吸収しやすく、また中性子吸収により核分裂しやすい。そのため、偶数の原子量を持つ同位体は、特に熱中性子炉の中では蓄積しやすい】

 

 上の説明のなかで、もっとも重大なことは、プルサーマル運転の場合、プルトニウム239が核燃料中の10% を占めていて、長期間、核分裂炉心に入れておくと、30%程度がプルトニウム240に変化して「自発核分裂=不完全核爆発」の危険性が増すため、数ヶ月程度で頻繁に核燃料を入れ替える必要が出てくる。

 プルトニウム240の比率が7%を超えると、自発核分裂による核暴走が起きる可能性があるので、兵器用プルトニウム核原料の場合は、240の管理が技術的核心になる。



 つまり、プルサーマル運転から世界中が撤退した理由の核心が、これなのだ。

 私は、今でも、3号機核爆発の原因として、このプルトニウム240が、水素爆発によって圧縮されて不完全核爆発を起こしたものと考えている。



 まずは、日本人にプルサーマルや大間原発のようなプルトニウム専用炉などを運転できる技術も知識も、実力もないことを知るべきである。

 学者も、原子力規制委員会も、電力企業も、誰一人、プルトニウムサーマル運転を扱えるだけの技量=実力が存在しないのである。

 したがって、これを強行すれば、必ずフクイチ3号機の二の舞、三の舞になることを警告しておく。