もう40年以上も前の話だが、私は堀江邦夫の「原発ジプシー」を読んで、一念発起し、この人生を反原発活動に捧げる決意をした。

 堀江氏の2匹目のドジョウを狙って、どこかの原発に内部潜入することを目指し、かなり長期的な計画で、原発検査員資格を取得、非破壊検査の下請け事業所にも入り込んで経験を積んだ。



 このとき取得した資格は、放射線取扱主任者をはじめ、各種非破壊検査資格、測量や溶接の資格など、全部で20種類を超えている。

 残念なことに、その後の人生で、取得した資格が身を扶けてくれたことはほとんどなかった。測量資格が、自分の家の建設に役立ったのと、大型二種を持っているので、旅客業界で多少役に立った程度だ。しかし、フクイチ事故が発生してからは、放射線資格を取得するための猛勉強で得た知識が、とても役立っている。



 そうして、意気揚々と紹介を受けて関西電力の某原発に入り込むことになったのだが、文字通りの関門であるゲートで書類を提出すると、入構を拒否されることになった。

 理由を尋ねると、私に反戦デモでの逮捕歴があることが知られたようだった。

 確かに、私はベトナムから戦死遺体を載せて飛んでくる立川基地周辺で、ベトナム反戦デモに参加し、逮捕されたことがある。



 しかし、まさか起訴もされなかった一回の逮捕歴で、苦労した原発検査資格が役に立たなくなるとは予想もしていなかった。

 このとき、関電は、堀江邦夫氏の潜入ルポが出版されて、世間に、そのデタラメで残酷な経営姿勢が暴露されてから、経営側が極めて神経質になり、作業員の管理を厳格化していたのだ。



 関電は、経営役員に、元裁判官、元検事(それも検事長クラス)、元警察官など司法関係者ばかりを天下りとして迎え入れ、その人間関係のしがらみを利用して、古巣の警察庁や検察庁から、反体制側の情報を手に入れ、巨大な公安警察のデータベースさえも入手していた。

 わずかでも、反体制活動に関わった人間を絶対に見逃さずにロックアウトしていたのだ。



 関西電力が、どういう歴史を持った企業か、私はダム問題などで、何回か書いた。

  

2009年07月13日 ダム問題 その5

 http://blog.livedoor.jp/hirukawamura/archives/1080797.html



 関電は、戦前の日電時代から、ヤクザの巣窟だった。黒四ダム建設は1956〜1963年だが、この時代は、日本中で、急ピッチの水力発電ダム建設が続いていた。

 この当時のダム工事は暴力団の天下で、雨竜ダム、佐久間ダムなどに記録があるが、殺人など日常茶飯、山谷や釜ヶ崎からダム工事人足として集められた労働者は「たこ部屋」に監禁され、低賃金で死ぬほどの重労働でこきつかわれ、暴力団の大きな資金源となっていた。



 工事発注元の関電担当者は、ほとんど見て見ぬふり、それどころか、現場のヤクザになめられないようにと、入れ墨をして、山口組の正規組員になる者も多かった。

 諍いや事故で死んだ労働者は、そのままダムのコンクリートに埋められたと、私のブログリンクに詳しく書いてある。

 当時、人里から数日もかかってたどり着く深山幽谷のダム工事現場には、司直の手が伸びようもなかった。



 こんな現場を経験してきた関西電力の関係者は、そうした非合法のたこ部屋労働が自然な姿だと勘違いして、自分たちまで暴力団の掟に染まっていった。

 この構図が、そのまま原発建設や運営に持ち込まれ、関西電力という会社は、あたかも山口組の拠点企業であるかのように、暴力と不正の闇のなかに墜ちていった。



 一連の、関西電力賄賂問題は、こうした伝統的な体質の上に染みこんだ、関電社内を流れる空気のような雰囲気であって、それが反コンプライアンス、「悪の論理」であることを気づく者さえいなかった。



 社内の不正を摘発されないように、潜り込んでくる情報屋や、堀江さんのようなライターは警察と関係を結んで排除し、仮に摘発されても、権力上層部の強い影響力を持った元検事長や裁判官を天下りさせ、権力の人間関係のなかでもみ消しを図ってきた。



 それが、突然、勇敢なメディアの努力で、世の明るみに出た。



 原発のドン”が現金ではなく「賄賂小判」を関電幹部に贈った理由

 https://friday.kodansha.co.jp/article/72159



 天下り元検事長を使った社内委員会が、「起訴は無理」のような矮小陳腐な結論を出すことがわかりきってはいたが、これに対し、元特捜検事の郷原氏は毅然と述べている。



 関電金品受領問題は「戦後最大の経済犯罪」〜原発事業をめぐる「闇」の解明が不可欠 郷原信郎 | 郷原総合コンプライアンス法律事務所 代表弁護士

3/19(木)

 https://news.yahoo.co.jp/byline/goharanobuo/20200319-00168613/



 現代ビジネス 3月20日 

関電事件、日産よりもひどいガバナンスと「モンスター」の頭の中

第三者委員会報告書の全容が示すこと

 https://gendai.ismedia.jp/articles/-/71229



 以下引用



 金品受領者の数が激増

 関西電力のあきれるほど非常識なコーポレートガバナンスの実態が明らかになった。



 関電の原子力発電所が立地する福井県高浜町の元助役、故森山栄治氏から同社役員らが多額の金品を受け取っていた問題を調査していた第三者委員会(委員長=但木敬一元検事総長)は14日、報告書をまとめ、その全容を発表した。



 第三者委員会によると、金品の受領は森山氏が助役を退任した1987年から始まったとされ、2018年の金沢国税局による税務調査によって発覚するまで続き、受け取った関電役員らの数は75人、総額は約3億6000万円相当だった。

 今回の調査で対象者と期間を拡大させたことにより、18年に関電が行った社内調査に比べて受領者は52人も増えた。



 森山氏が金品を渡した理由について、第三者委員会は「氏が相談役を務めるなど関与する企業への受注の見返りだった」と認定。いわゆる「森山関連企業」に対して、入札を行わずに随意契約で高い価格で発注し、コンプライアンス違反によって得た不適切な利益が、関電役員らに渡った金品の原資となっていた。



 「森山氏から『元請けにしてくれ』と頼まれ、1000万円の金が関電役員に渡ったケースもある」と但木委員長は説明した。



 記者会見では、こうした金のやり取りを刑事告発しないのかとの質問が出たが、但木委員長は「正直言うと難しい。1000万円もらっても元請けにしていないケースもある。明確に『工事受注のお礼です』といった言い方ではなく、主旨を明らかにしていないケースもある」と述べた。加えて、森山氏が死去し、関係者の証言が直接得られないことも、刑事事件化のハードルを高くしているようだ。



 筆者も記者会見に出席したが、注目したのは、第三者委員会の特別顧問、久保井一匡弁護士が指摘した「関電は自浄能力がなかった」という言葉だ。



 報告書を見る限り、関電は確かに自浄能力がなく、特に上層部は腐りきっていた。森山氏が死去し、税務調査が入らなければ、この「不正」はずっと続いていたであろう。



 自浄能力がなかったという点では、東京地検特捜部という国家権力の手を借りなければ、制御不能の「モンスター」と化したカルロス・ゴーン氏の不正を追及できなかった、日産自動車の事件と似ている。今回の関電の場合でも、会社の暗部を握る森山氏が「モンスター」となり、ゴーン氏と同様に関電自身では制御できなくなっていた。



 1億円以上受け取っていた男

 こうした実態について第三者委員会は、「森山氏が関電役員らに金品を渡したことについて、共犯関係に持ち込むことを意図したものであったと考えられる」と説明。つまり森山氏は、社会的儀礼を超えた金品を強引に受け取らせることで、「関電側と森山氏の不正常な関係を露見させれば、関電役員の悪事も露見するぞ」と暗に脅すことを狙っていたというのだ。



 日産の場合でも、ゴーン氏がやっていることが薄々おかしいと気づいていながらも、ゴーン氏の行動に見て見ぬふりをし、ゴーン氏の覚えめでたく多額の報酬を得ていた役員もいた。



 報酬だけに限らず、特別背任事件の舞台となった、日産から不正な資金が還流したオマーンの販売会社に幹部が出張に行けば、お土産で数百万円の時計がもらえた。これもある意味でゴーン氏との「共犯関係」になることで、オマーンでの悪事が外部に露呈しにくい構造を作っていたわけだ。



 そして、森山氏と最も深い共犯関係にあったのが、原子力事業本部長などを歴任した元副社長の豊松秀己氏だ。氏は森山氏から1億円以上の金品を受け取っていたことが第三者委員会の調査で分かっている。



一部メディアによると、この豊松氏は大阪の歓楽街「北新地」での豪遊ぶりで有名な存在だったという。



 組織的な隠蔽の形跡

 「関電は自浄能力がない」と指摘されるのは、悪いことと分かっていながら森山氏からの金品受領を断ち切れなかったことだけではないと筆者は考える。むしろ、この問題が発覚した後の処理の仕方に、自浄能力のなさが現われている。



 このことをもう少し説明するために、問題発覚後の流れを時系列に示してみる。



 2018年2月以降の金沢国税局による税務調査を契機に、関電は社内調査を開始。同年6月22日に第三者の弁護士3人を入れた社内調査委員会が設置され、同年9月11日に社内調査報告書ができた。



 その約1年後の19年9月26日、共同通信がこの問題を報道したことで関電が社内調査報告書を対外的に公表した。そして同年10月9日からは新設の第三者委員会が調査に乗り出し、約5ヵ月かけて今回の調査報告書を発表したという流れだ。



 開いた口が塞がらないというか、あきれてしまうのは、まず、18年2月以降の社内調査の調査メンバーに、コンプラ違反の舞台となった原子力事業本部の社員と、森山氏から金品をもらっていた社員が入っていたという点だ。こうした人選をした時点で、社内調査の内容の信頼性はないに等しい。



 さらに、社内調査報告書ができた18年9月11日時点で、経営陣に膿を出し切ろうという考えはなく、当時の八木誠会長、岩根茂樹社長、森詳介相談役の3人が相談して公表しないことを決めた。同年10月には調査内容が監査役にも報告されたが、監査役会から取締役会に対し問題が指摘されることはなかった。この構図を見る限り、関電は組織的に隠ぺいしようとしていたことがうかがわれる。



 しかし、それから約1年が経った19年10月に共同通信がこの問題を報じたことによって、関電は社内調査結果を対外的に発表せざるを得ない状況に追い込まれた。



 どう見ても「特別背任」的

 関電のあきれた体質はこれだけではない。この問題の「主犯格」の一人、豊松氏が19年6月21日の株主総会で取締役を退任した後の対応に、自浄能力のなさの本質的な部分が垣間見える。



 豊松氏は退任後、月額報酬490万円の役員待遇のエグゼクティブフェローに就任した。氏の副社長時代の月額報酬は370万円だったが、なんと退任して120万円が加算された。



 その内訳は、90万円が東日本大震災後に原発を稼働させられずに業績が落ち込んでいた時期にカットされていた役員報酬の「戻し」で、30万円が税務調査によって豊松氏個人が修正申告によって払った所得税分の補填だった。関電は会社として豊松氏の修正申告分を5年間にわたって補填し続けることを決めていた。



 第三者委員会の報告書ではこの点について、「豊松氏らの修正申告およびそれに伴う納税は、個人の税務上の問題であって、役員等の職務執行に関するものとはいい難く、そもそも当該補填の正当性を認めることは困難と思われる」と明記。但木委員長は「けしからんと思って報告書に書いた」と言い放ったが、金品の受領や補填に関して豊松氏の刑事責任を問うことは難しいとの考えだった。



 今回の問題では、豊松氏らが「不正発注」を行って高額の仕事を森山氏の関連企業に与え、その利益の一部が豊松氏らに還流していた。どう見ても、会社に損害を与えて自分の利益を得ていた特別背任的な行為のようにしか見えない。豊松氏に対して何のお咎めもなしでは、社会も株主も納得しないのではないだろうか。



 「東レのゴーン」が会長に?

第 三者委員会の調査報告書が公表された日と同じ3月14日、関電では岩根社長が引責辞任し、森本孝副社長が社長に昇格した。新社長には今後、組織風土改革など大きな仕事が待ち受けている。社外取締役が中心となり、経営の透明性が増すとされる指名委員会等設置会社への移行も検討している。会長には外部人材を登用し、その候補には前日本経団連会長の榊原定征氏が挙がっている。



 このプロセスも日産と重なる。日産も「ゴーン事件」後、ガバナンス改善特別委員会を設置して榊原氏が共同委員長に就任し、指名委員会等設置会社への移行を具申。横滑り的に榊原氏が日産会長(議長)に就く構想もあったが、潰れた。



 当時、「榊原氏は『東レのゴーン』と揶揄され、出身企業の東レで公私混同があって、東レには出入り禁止状態。黒塗りの車も親しい全日空が手配していた」(経団連関係者)。



 経産省の官僚も「榊原氏は自分の考えが全くなく、官僚が作成したQ&Aを丸暗記するのが特技」と言う。こうした悪い噂もあって、榊原氏は日産の会長(議長)に就かなかった。



 変わらない関電の「悪しき風土」

その日産はいま、榊原氏らが具申した指名委員会等設置会社に移行したことが原因で苦しんでいる。本コラムでも以前指摘したが、日産の関潤副最高執行責任者が昨年12月末、就任から1ヵ月もたたずに退任し、日本電産に転職したのは、指名委員会の人選ミスが原因だった。日産の内情を知らない社外取締役が、日産内部をかき乱し、経営再建の足かせとなっている。



 関電も安易に指名委員会等設置会社に移行し、榊原氏を会長に迎えたら、日産と同じような状態になるかもしれない。それはすなわち、見せかけだけの改革をして、本質は何も変わらないどころかもっと悪い方向に向かうということだ。



 筆者の個人的な話だが、関電と言えば、16年前を思い出す。2004年、朝日新聞大阪経済部の記者を最後にフリーランスに転身した筆者は当時、関西財界を担当していた。退職の挨拶に出向くと、幹部から「うちはフリー記者は広報ではなく、総会屋と同じ総務部で対応します。井上さんはこれから総会屋と同列です」と言われた。



 その人物はいま、常務執行役員に就いている。関電の組織風土は当時から何も変わっていないー―。実はそれが、今回の問題を知った時の筆者の第一印象だった。

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 引用以上

 

 まず上の文章は、とても心優しい評論で、関電役員が、もはや人間の形もとどめないほど、ドロドロに腐敗した死体であることを真正面から指摘していない。



 一番大切なことが書かれていない!

 こんなコンプライアンスも企業倫理も人間性も存在しないで利権だけで動いてきた関西電力に、全人類の命運を背負った原子力発電の運営ができるのか?



 できるはずがないじゃないか! こんなドロドロに腐った企業が超超危険な老朽原発を運営すれば、巨大事故を起こさない方がおかしい。

 私は前世紀から、日本の原発が大事故を起こすとするなら、関西電力美浜原発か、東京電力福島第一原発と予想してきた。

 そして予測通りに、フクイチは巨大放射能事故を起こし、日本民族の未来すら危うくしている。



 私は断言する。次に原発メルトダウンを引き起こすのは、関西電力の原発である。

 すでに、何度も、関電若狭原発群の危険性を警告してきた。



高浜原発で危険な警報!2019年09月09日

 http://tokaiama.blog69.fc2.com/blog-entry-864.html



 恐るべき腐敗、悪臭を放ち続ける関西電力 2019年09月28日

 http://tokaiama.blog69.fc2.com/blog-entry-884.html



  反原発町長を、はよ殺さんかい! 2019年10月01日

 http://tokaiama.blog69.fc2.com/blog-entry-887.html



 まだ、たくさんあるが、長くても意味がないので、ここいらにする。

 大切なことは、こんな腐敗した連中に、超危険な原発を任せれば、とんでもないことが起きるという危機だ。

 「ハインリッヒの法則」は、一つの巨大事故が起きるためには、必ず300もの小さな事故が起きているということで、つまり、たくさんの隠蔽や不正が重なると、東電のように、どんどん規律が緩み、不正や隠蔽が体質に変わり、やがて事故への危機感も薄れていってしまうということだ。



このままで、関電が事故を起こさないわけがないのだ。例えば美浜原発の大事故のように、しかし、今度は加圧式原子炉が大爆発を起こすことを私は恐れている。