私の住む中津川市と隣の恵那市は、恵那盆地という、ひとくくりの地域で、自治体は違えども、事実上、一つの地域といってもよいいほどだ。
「半分青い」といいう朝ドラがあって、これが「東美濃市」という虚構地名を使っていたが、実際の行政区は恵那市(旧、岩村町)であり、まあ恵那も中津川もひっくるめて「東美濃市」に変えても、大きな文句は出ないような気がする。
なんとなく、恵那も岩村も、中津川も付知も、みんな「遠くの異郷」ではなく「オラが村」という気分になる。
土地の特産物である、五平餅やヘボ、寒天もアジメコショウもケイチャンも、共通に食べられているからだ。
それに、どうみても美濃というより信州というべき風土にも共通点がある。
この地域に住む人々にとってのアイデンティティ(自己同一性)を形成している要素は、「東濃地域」とか、中山道とか、いろいろあるのだが、まずは、論理的な分析以前に、「どこからでも巨大な恵那山が見える土地」というのが大きいのではないだろうか?
ここに住む人々は、幼い頃から、至る所で恵那山を見せつけられながら育ってきていて、「故郷の心象風景」として心に刻まれているので、たぶん遠方から帰宅したとき、恵那山が見えると、故郷に帰ったという実感を味わえるはずで、これがアイデンティティとして、地域の連帯感=仲間意識の柱になっているのではないだろうか?
日本百名山に選定されているが、標高は2191mと、日本では山岳標高ランキング100位にさえ入ることができないが、この標高は、東北地方にゆくと、 燧ヶ岳2356 m 鳥海山2236 mに次ぐもので、大雪山2290mトムラウシ2141mにも匹敵し、登ってみれば、その印象は本当にデカいというしかない。
ちなみに、恵那山より南に、これより高い山は存在しない。2000mを超える日本最南端の山であり、四国の石鎚山1982mがこれに次ぐ。紀伊半島最高峰の八経ガ岳は1915mである。(西方面では白山2702mがある)
私は、名古屋に住んでいた時分から、遠くに見える、この山は故郷の山のような親しみがあって、たぶん10回近くは登っていると思う。
初めて登ったのは、もう40年以上前で、当時は、ルートといえば、今の広河原ルートのような短時間で登れる道がなくて、5時間近くかかる長い黒井沢ルートと、神坂からの長い長い稜線ルートしかなかった。
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だから、恵那山というと「長い・辛い」という直観的印象が染みついてしまった。
最近では、10年以上前に神坂から稜線を往復したが、ノコギリ歯のような激しいアップダウンに疲れ果てたのと、笹藪を漕いでゆくとき、マダニに食いつかれて恵那山への良い印象が薄れ、足が止まってしまっていた。
また、山頂がどこなのか分からない黒木に覆われた茫洋とした山容で、胸のすくような展望も望めない。
しかし、私が中津川市に住み着くようになった最大の理由は、やはり、この山への愛着と憧憬であると思う。デカイから、どこからでも見える。中部地方の高い山に登ったとき、独特の山容から同定指標になるのが、恵那山と白山、それに御嶽山と伊吹山であった。
とにかく、見ていて気持ちいい。饅頭のような山容だが、どこから見ても姿が変わらず、すぐに恵那山だと分かるのがいい。

恵那盆地から見える山としては、恵那山を含む中央アルプスと、裏木曽山地の奥にそびえ立つ(遠いのに茄子川付近から見ると、本当にそびえ立って見える)御嶽山、それに2000m前後の、裏木曽・小秀山や大川入山などたくさんあるのだが、なんと言っても、目の前、(たぶん前宮谷ルートなら、中津川駅から直接登れるはず)に見えている巨大な山容の存在感が圧倒的であり、恵那盆地は恵那山と一心同体であるように思える。
恵那山は、遠目の姿が麗しいのである。恵那盆地のどこからでも、素晴らしい恵那山の容姿を見ることができるのだが、私がお勧めするのは、高峰湖という人造池の上にある高塚山という小さなピークからの眺めで、遠くの恵那山と、目の前の高峰湖の対比が素晴らしい。
また森林遊歩道としても、木曽の赤沢にも劣らない楽しさがあって、お勧めできると思う。


なお、現地の正確な案内図は、大半が正しく示されていない。理由は、ここが日本最大の水晶産地で、盗掘者に水晶産出地を知られたくなくて、地元からの要請があったと思われる。(最大産出地は、右上の立ち入り禁止区域にある)
鉱物博物館から入って、駐車場を過ぎると、左側に休業中の高峰湖畔、高峰山荘に入る細い道があるから、その先に立派なトイレと駐車場があって、ここに車を止めて遊歩道を歩けば良い。(三つ並んだトイレマークの一番左側)
ここから山荘に沿って上がり、チン湖に向かい、案内板を左手に入る(案内板からはルートが削除されてる)と、もみじ道に合流、稜線に沿った道を歩くと、しばらくで高塚山の標識があり、10分ほどで頂上、帰路は関戸川ルートが難しいので、戻って高峰湖に降りた方がいい。
なお、チン湖から真っ直ぐ歩くと、湿原を経て林道に出るから右に降りてゆくと、高峰林道に合流し、高峰山荘に戻ることができる。
いずれも1時間と少しのコースである。ハイキングには最高、4月から5月は、素晴らしいツツジのプロムナードで、実に快適だが、もうシーズンは終わりを迎える。
もっとも長いコースは、高峰山荘から高峰山方向の林道に向かい、最初の橋手前を直進、最初のT字路を左折、チン湖に出て、関戸川から高峰湖に戻ると、二時間半ほどのミドルルートになる。
恵那山を見るだけでは嫌で、実際に登りたい方には、広河原ルートをお勧めしたい。往復7時間程度と思われるが、私は行ったことがないので説明できない。
黒井沢ルートは、相当にきついベテラン向けで、あまりお勧めしたくない。神坂からの稜線ルートは、アップダウンも激しく、笹藪にダニが多いので、これもお勧めできない。
高峰湖から林道を直進し、3Kmほど先の十字路を左折すると、チンの峠に出て、ここから高峰山の一周二時間コースがある。これも人がいなくて快適なルートだ。
私が、棘木を切ったり、道標をつけたりして、ときどき整備に入っている。
私が中津川という土地を好きになったのは、もちろん素晴らしい山々が目白押しにあるからで、もう20歳くらいの頃から、いつか中津川に住んで見たかった。
恵那山は、中津川駅から一泊二日で歩いてもいけるし、恵那盆地内のハイキング山だけでも、笠置山・二ツ森山・屏風山・高峰山・保古山などたくさんあり、妻籠から馬込の峠越えハイキングも楽しい。
たぶん、通向けルートを探せば、100では効かないだろう。
それも1時間から7時間まで、たくさんのルートがあって、よりどりみどり、少し(数時間)足を延ばせば、中央アルプスの越百山や空木岳、南駒ヶ岳などにも日帰りで登れる。御岳も早朝に出れば日帰り可能である。
今は、間質性肺炎をやってから、呼吸力が落ちたので、急な山は困難だが、自分の体調に合ったルートはいくらでもあるので助かる。
本当に、山好きにはこたえられない素晴らしい土地である。
しかも、土地がもの凄く安く、中古別荘でも300万円あれば立派なものが手に入る。
あと10年後にはリニア新幹線中津川駅が、うちの近所(坂元駅)にできるらしいが、私としては、それまでに日本国家が崩壊すると見ている。
子供たちにとって、2000m、3000mの山並みが目の前にあることは、情操教育にとっても大きな意味があるような気がする。
青い山脈という映画の宝田明版も、中津川で撮影され、本当に雰囲気そのままだ。
https://www.youtube.com/watch?v=sqOhCVzclro
この中の湖は、たぶん落合川駅前の貯水池だろう。この付近は、昔は長野県だったのだが、今では岐阜県中津川市に編入されている。
中津川市は、美濃ではなく信州そのものだと私は思う。どうして美濃になったのか分からないが、山の雄大さ、人々の純粋さを見ていると、「ここは信州」と思わざるをえない。
2000mの稜線を見ながら育った子供たちの心はのびのびと大きくなり、人間社会の小さな軋轢などを気にしなくなる。イジメも少なくなるはずだ。
子供たちが、人間社会よりも大自然に強い興味を抱くようになれば、暖かい人間が形成されるのではないだろうか?

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