フクイチ1号機の土台が全面的に崩壊し、総重量440トンを超える、核燃料が入ったままの圧力容器が落下し、その衝撃で内部にある膨大な放射能が環境に飛散する可能性が指摘されている。



 東京電力の危機意識の薄さ鮮明…福島第一原発1号機の原子炉土台損傷 緊急時対処も具体策は先送り 東京新聞 2023年5月7日

https://www.tokyo-np.co.jp/article/248378

 東京電力福島第一原発(福島県大熊町、双葉町)の1号機原子炉圧力容器を支える土台が損傷していた問題を巡り、東電の対応が後手に回っている。土台が崩壊し、核燃料が残る圧力容器が落下すれば、高濃度の放射性物質が新たに放出される恐れがある。

 東電は容器落下の可能性は低いとして、緊急時の対処をどうするか具体的に示していない。原子力規制委員会も苦言を呈するが、東電の危機意識は薄い。(小野沢健太)



 1号機の土台損傷 土台は鉄筋コンクリートの円筒形で、厚さ1.2メートル、内側の直径は5メートル。核燃料が入っていた重さ440トンの圧力容器を支えている。

 昨年2月〜今年3月に実施した水中ロボット調査で、土台開口部のほか、内周の壁面が床から高さ1メートルにわたって全周でコンクリートがなくなり、鉄筋が露出していたことが判明。事故時の溶融燃料の熱で崩壊した可能性がある。土台外周の床付近は堆積物が積もって確認できず、損傷の奥行きは分からない。



 ◆明確な根拠なく「問題なし」

 1号機の土台内部。右上には鉄筋が露出した壁が見え、手前には車輪のような部品が落ちていた=東京電力福島第一原発で(国際廃炉研究開発機構提供)

 1号機の土台内部。右上には鉄筋が露出した壁が見え、手前には車輪のような部品が落ちていた=東京電力福島第一原発で(国際廃炉研究開発機構提供)



 「支持機能は維持されている」。4月27日の記者会見で、東電福島第一廃炉推進カンパニーの小野明・最高責任者はそう強調した。調査ロボットの撮影で、土台全周の損傷が判明したが、圧力容器を支えるのに問題はないという意味だ。昨年3月の震度6強の地震でも容器が落下しなかったことなどが根拠という。



 仮に落下して容器底部にある穴が広がり、溶融核燃料(デブリ)が飛び散っても、炉の底部が冷却水で満ちているため「大量の放射性物質が外部拡散する事態にはならない」との見解だ。だが、圧力容器外側の格納容器を壊し、放射性物質が外部に飛散する可能性は捨てきれない。



 根本的な対処法は土台の耐震補強だが、現場は極めて高い放射線量で人が近づくことは不可能。東電の広報担当者は「遠隔操作のロボットで撮影することすら難易度が高く、改修は難しい」。それならば、落下する最悪のケースを想定し、影響を最小限にとどめることが現実的な対処だが、土台開口部の損傷が最初に確認されてから1年以上がたった今も、具体策を示さない。



 ◆規制委が指摘も動き鈍く

 4月14日の規制委の検討会でも、東電は具体策を「検討中」とした。検討の方向性として、原子炉の気圧を調整して外部に漏れにくいようにすることなどを説明したが、手順がはっきりせず、安全を確保できるのか分からない。



 巨大な地震はいつ起きてもおかしくないが、東電は今後、数カ月かけて土台の耐震性を評価するとして、動きは鈍い。これに、規制委事務局の担当者は「(調査映像を基にした)仮定の条件での耐震評価は意味がない。緊急時の対処を先に考えるべきだ」と指摘。それでも、東電の小野氏は会見で「耐震性の評価と並行して(対処の)検討を進める」と姿勢を変えなかった。



 【関連記事】<動画>圧力容器の土台は全周で損傷と東電判断 福島第一原発1号機の耐震性再評価へ

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 引用以上



 フクイチメルトダウン原子炉損傷問題は、事故直後からたくさんの告発が行われ、小出裕章氏らは、廃炉・原状回復は不可能であり、一刻も早い「石棺化封鎖」が必要と主張してきたが、政府も東電も、「廃炉・回復可能」と強弁して、とりあわなかった。



 そもそも、これまで放射線量が高すぎて近づけないことを理由に、「原子炉の状態は不明」として、メルトダウンの事実そのものも隠蔽し続けてきた。

 東電が全面的にメルトダウンを認めたのは、泉田新潟県知事の要請により、事故から5年も経過してからであり、それまで東電上層部は、メルトダウン隠蔽を指示していたことが暴露された。

  https://www3.nhk.or.jp/news/genpatsu-fukushima/20160621/1414_rosin.html



 事故から二ヶ月後には、破局的状態を把握していたにもかかわらず、「メルトダウンは起きていたが、炉心に大きな損傷はない」と公表している。

 https://www.asahi.com/special/10005/TKY201105240079.html



 しかし、最近になって、実はメルトダウンどころか、1号機の原子炉底の厚さ1.2mのコンクリートが完全崩壊していることを明らかにした。これは「損傷」などのレベルを超えていて、原状回復が絶望的であることを意味している。

 原子力業界では、こうした破局的崩壊のことを「チャイナ・シンドローム」と言い表している。

 https://www.tokyo-np.co.jp/article/241172



 原子炉の底が抜けて、核燃料が地球の反対側にまで落ちてゆくというジョークだが、現実問題は、地下数百メートルの地下水盆にまで溶融落下し、ここで大規模な水蒸気爆発が起きるリスクを示している。

 なぜ、チャイナ・シンドロームが起きるかと言えば、溶融核燃料が再臨界を繰り返しながら膨大な発熱を続けるからだ。それは溶鉱炉どころの熱ではない。



 フクイチ原子炉の場合、4000度の高温に達したことが核種から確認されているが、地下深くで再臨界が繰り返されるなら、コンクリートや地盤など軽く溶かしながら、際限なく沈降してゆく。

 それは再臨界が止まるまで続くのである。その間、地下水と接触して水蒸気を放射し続けるのだ。



 実際に、福島第一原発では、事故後数年間にわたって、チャイナ・シンドロームによる膨大な水蒸気放射が確認されているが、原子力ムラもメディアも、それを公表もせず、追求もしなかった。東電は、都合の悪い情報を隠蔽する悪意ある体質なのだ。

 http://hirukawamura.livedoor.blog/archives/6034130.html



 そもそも、数百メートル溶融落下していることは、未だに公式にどこからも報告されていない。

 もしも事実なら、関東東北の地下水盆全体に絶望的な悪影響が出ることを意味し、今後数百年以上、大深度地下水の利用が不可能かもしれないことを意味する。

 たとえ、数十メートルであっても、放射能はいずれ地下水盆に達するのだ。その地下水盆は、関東を含む広大な地下を拡散移動しているのである。



 現在までに確認されている情報には、こんなものがある。

 【今後、如何に深くまで進み止むか予想可能、不可能? テレビ朝日系(ANN) 2/2(木) 18:53配信 原子炉の真下の通路に穴が開いていました。メルトダウンした核燃料が溶かしたとみられます。 東京電力によりますと、福島第一原発2号機の炉心近くで撮影した映像を分析したところ、原子炉の真下を通る金属製の作業用通路に1メートル四方の穴が開いていました。メルトダウンして炉心から流れ落ちた核燃料が床を溶かした跡の可能性があります。内部の空間線量は、推定で1時間あたり530シーベルトという極めて高い数値だったということです。東電は、月内にも調査ロボットを投入して詳しく調べる方針です。】



 この径1mの穴がどこまで深いか分かっていないが、もしも地下水脈、水盆に達しているとするなら、これまでも放射能汚染水がミネラルウオーターとして市中に出回ってきた可能性もある。

 そうした地下水汚染の問題について、国も、東電も、未だに責任回避の頬かむりをしたままだ。



 もしも、非常に近い将来、東北太平洋岸で東日本大震災に匹敵する巨大地震が発生したなら(青森沖アウターライズ地震と、福島沖では可能性が非常に強まっている)、この不安定な穴の上に置かれている440トンの原子炉が落下して大破し、内部の100トン近い使用済み核燃料が環境に放出する可能性は極めて深刻である。

 

 現状は、メルトダウンの超高温で崩壊させられたコンクリート土台の鉄筋がむき出しになりながらも、辛うじて原子炉を支持しているが、その下に開いている穴が、どれほどの大きさ、深さであるかについて、東電は情報公開を拒否し、原子力規制委員会も、原子力推進政策によって隠蔽を決め込んでいる。



 確かに、穴の深さが数百メートルあるとしても、落下するのは数メートル程度かもしれないが、その衝撃で内部に残っている使用済み核燃料が飛散する可能性は半端な事態ではない。

 かなり前だが、私が調査にでかけたとき、千葉県内で、外壁解体工事に伴なう恐ろしい放射能汚染を確認したことがある。

 http://hirukawamura.livedoor.blog/archives/5828426.html



 2013年8月23日、このとき、数日前からフクイチ原子炉の外壁解体工事が行われた。これで物凄い放射能汚染が起きるのではないかと疑われていたが、報道は一切されなかった。政府や電通がメディアに隠蔽圧力をかけたのだろう。

 だが、千葉県内でGM計が70マイクロシーベルトを示したのだ。

 上のリンクに書いたとおり、おそらく、解体工事に伴って、外壁付近に散らばった核燃料被覆管を壊してしまい、内部からクリプトン85ガスが大気に噴出し、それが千葉県まで流れ込んできたと考えられる。

 その人体への影響は、肺癌イニシエーションや生殖毒性が疑われている。



 事故から12年を経た今では、短寿命核種が減衰しているので、残るのはクリプトン85・トリチウム・セシウムX・ストロンチウムXなどの長寿命核種と、メジャー・マイナーのアクチノイド主体だが、生物毒性が高いものばかり揃っている。

 もしも、原子炉が床の穴に崩落した場合、内部に残った核燃料被覆管が破壊され、やはりクリプトンやセシウムが環境に飛び出してくる可能性が強い。



 自民党政権が、なんとしても核武装を実現したく、意向を受けて国は、原子力に関するあらゆるネガティブ・マイナス情報を隠蔽し、「明るい未来」のようなインチキ情報にすり替えて、国民を騙し続けている。

 だが、フクイチ事故は、2023年でも終わるどころか、次々に恐ろしい放射能汚染問題を繰り返している。



 人類の叡智を集めても、おそらくチャイナ・シンドロームによる地下水汚染問題は解決できないだろう。石棺化しなければ、次に起きる巨大地震によって、再び恐ろしい放射能汚染が起きることが確実である。

 福島第一原発事故の処理、終息は、人類の存在期間中に解決することはないと断言できる。



 それは汚染したアクチノイド元素の寿命が数十、数百万年の単位だからだ。

 人類は放射能に手を出してはならない。

 放射能を使えるほどの高度組織を作ってはならない。人類は、原始共産制社会に戻って、自然と共生する社会のなかで滅亡を迎えなければならないのだ。