日本政府は、8月を目処に、福島沖にフクイチ事故によって生成された放射能汚染水を海洋放出すると公表している。
<社説>原発処理水 放出「強行」は禍根残す 東京新聞 2023年7月6日
https://www.tokyo-np.co.jp/article/261242
東京電力福島第一原発の「処理水」の海洋放出をめぐり、国際原子力機関(IAEA)は、国と東電による放出計画は「国際的な安全基準に合致する」と評価した。しかし、漁業者、消費者、そして国際社会の不安は募る。IAEAの報告を放出開始の“お墨付き”にすべきではない。
福島第一原発の1〜3号機には溶け落ちた核燃料を冷やすため、水を注ぎ続けなければならず、これに加えて地下水や雨水が流れ込むため、一日約九十トンのペースで放射能汚染水が発生している。
汚染水に含まれた放射性物質の大半は多核種除去設備(ALPS)で取り除くことが可能だが、水とそっくりなトリチウムは残る。
このため、専用のタンクにくみ上げて、原発敷地内に保管してきた。しかし、千基を超えるタンクが敷地内に密集し、廃炉作業に支障が出るとして、政府は一昨年四月、濃度を国の基準値未満に薄めた上で、海に流す方針を決めた。設備も整い、今夏にも放出にかかる意向を示している。
IAEAは、人や環境への影響は「無視できるほどごくわずか」としたものの「海洋放出の方針を推奨するものでも、支持するものでもない」との留保も付けた。
トリチウムは自然界にも存在し、海洋放出は国際的に認められているものの、事故原発で発生した処理水の影響は定かでなく、除去装置のトラブルも考慮に入れる必要がある。
IAEAも「放出開始後も監視を続ける」としており、三十年に及ぶ長期放出計画の安全性が保証されたわけではない。
風評被害を恐れる漁業者と政府の間には「関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない」との約束がある。対岸の中国や韓国などからの不安の声も高まっている。このまま放出に踏み切れば「強行」のそしりを免れ得まい。
廃炉を円滑に進めるためには“処理水の処理”が不可欠だとしても、漁業者、消費者、そして国際社会の理解は足りていない。IAEAの見解を盾に、拙速に進めるべきではない。不信と不安も「除去」してからだ。
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引用以上
すでに、私はブログで、フクイチ事故汚染水問題を数十回取り上げている。
今さら付け加えることも少ないのだが、この放出が太平洋漁業に与える影響について、一番肝心で深刻な問題が隠蔽され、メディアも意図的に忖度して、報道を回避していることで、恐ろしい結果を招くのではないかと危惧している。
それは「魚介類が食べられなくなる」ことである。
隠されている最大の問題は、海洋生物の放射能濃縮問題だ。
「海産生物による放射性物質の濃縮」放医研 中村良一
https://inis.iaea.org/collection/NCLCollectionStore/_Public/28/007/28007528.pdf
上のPDFリンク、中村氏は原発推進派であり、海洋生物の放射能汚染について深刻な危機感を抱いていないように見える。
しかし、リンク先の一部だけ、取り出してみよう。
プルトニウムは、マダコの心臓に10000倍、海苔に1000倍濃縮されたとある。
セシウムは、淡水魚で4000倍、ストロンチウムは、バーチに300倍、ワカメに18倍と記録されている。ヨウ素は、昆布に800倍である。
他にも、はるかに深刻な濃縮度がPDFリンクに大量に記載されている。
中村氏は、たぶん放射能の内部被曝は無害という洗脳を受けているようにさえ思える。
国は、「排出基準値以下にまでALPSで浄化してから放出する」と主張している。しかし、どれほど薄めたとしても、再び、数百〜数百万倍も核種が濃縮されるのだ。
どんなに薄めても、海洋生物が、それを再び、有害で危険なレベルまで濃縮してしまうのである。
放射能の生物濃縮 AG110m 東大 森敏
https://www.a.u-tokyo.ac.jp/rpjt/event/2012120807.pdf
2011 年 6 月から放射能汚染現地で多くの種類の植物ばかりでなく小動物も採
取し始め、広大な汚染現地で一体何が起こっているのかを調査しています。10月に台風が来る前の日に偶然採取したジョロウグモから、ゲルマニウム半導体で未知の放射能ピークを検出し、それが原子炉制御棒被覆管由来の銀の異核同位体 Ag-110m であることを同定しました。
http://moribin.blog114.fc2.com/blog-entry-1306.html
その後の調査により、小動物の種類によって Ag-110m は Cs-134 や Cs-137 よりもはるかに「濃縮係数」が高いことを明らかにしました。つまり銀は環境中での生物間循環速度が速いのです。
一方、小動物の Cs の「濃縮係数」は植物の「移行係数」よりも一桁以上高くなっています。つまり、食物連鎖に順って放射性 Cs や放射性 Ag が生物濃縮し始めていることは明白です。
生体の必須元素でないにもかかわらず、ある種の生物では、Cs は K(カリウム)のかわりに、Ag-110mは Cu(銅)のかわりに、生体に取り込まれて、活発に代謝されている実像が明らかになっ
てきました。
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引用以上
セシウムはカリウムの代わりに、銀は銅の代わりに生体に取り込まれ代謝されると書かれている。
以下は環境省が公表している海洋生物の放射能濃縮係数
放影研、中村氏のPDFに比べて、ずいぶんと矮小な数字になっている。
以下は、アメリカのハンフォードにおけるデータ
こちらでは、放出された核物質が、数百万倍に濃縮されることを示している。
私が過去に、このブログで書いてきたフクイチ放射能汚染水放出問題。ざっと50編くらいあるが、重要なものだけを再掲する。
いよいよ放射能海洋投棄 2021年04月10日
http://hirukawamura.livedoor.blog/archives/5827295.html
【130カ月目の汚染水はいま】「海に流されるのは放射性物質だけではない!」
2022年01月27日
http://hirukawamura.livedoor.blog/archives/5887277.html
巨大放射能汚染事故から12年、地下水に浸透するストロンチウム90への懸念 2023年04月04日
http://hirukawamura.livedoor.blog/archives/6026840.html
再び汚染水海洋投棄問題 2023年05月03日
http://hirukawamura.livedoor.blog/archives/6034130.html
実は、ALPSによる汚染水浄化=処理水の具体的な中身は一切公開されていない。本当に62種類の核種が除去されているなら、そのデータを公開すればよいのに、どこにも存在しない。国は、ALPS処理水と称して、放射能汚染水を隠蔽しているのだ。
2018年に朝日新聞が処理水とやらについて東電を追及したところ、以下の記事になった。(一部有料)
汚染水、浄化後も基準2万倍の放射性物質 福島第一原発 小川裕介 石塚広志 編集委員・大月規義 川原千夏子 2018年9月28日
https://www.asahi.com/articles/ASL9X6HQ3L9XULBJ014.html
福島第一原発の敷地内のタンクにたまる汚染水について、東京電力は28日、一部のタンクから放出基準値の最大約2万倍にあたる放射性物質が検出されていたことを明らかにした。
今回分析した浄化されたはずの汚染水約89万トンのうち、8割超にあたる約75万トンが基準を上回っていたという。
東電や経済産業省によると、多核種除去設備(ALPS)で処理した汚染水を分析したところ、一部のタンクの汚染水から、ストロンチウム90などが基準値の約2万倍にあたる1リットルあたり約60万ベクレルの濃度で検出された。
東電はこれまで、ALPSで処理すれば、トリチウム以外の62種類の放射性物質を除去できると説明していた。
東電は今後、汚染水の海洋放出などの処分法を決めた場合は、再びALPSに通して処理する方針も示した。タンクに保管されている処理済みの汚染水は現在94万トン。現状の処理能力は1日最大1500トンにとどまっており、再び処理することになれば、追加の費用や年単位の時間がかかるのは必至だ。
基準値を超えた原因について、東電は、2013年度に起きたALPSの不具合で、処理しきれなかった高濃度の汚染水がそのまま保管されていることや、処理量を優先し、放射性物質を取り除く吸着材の交換が遅れたことなどを挙げている。今後、吸着材の交換時期を見直すなど対応を検討するという。ただ、今後も基準値超えの放射性物質が検出される可能性は否定できないと認めた。
東電は、こうした測定値をホームページで公表していたが、積極的には説明してこなかった。「掲載しただけで満足していたのは大きな反省点」としている。
今年8月に福島県などで開かれた経産省の公聴会では、汚染水の中にトリチウム以外の放射性物質があることに批判が集まっていた。(小川裕介、石塚広志)
■【解説】住民側の指摘で明ら… 以下有料記事
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引用以上
このとき、国と東電は、現在と同じで、ALPSによって、大半の核種を基準値以下に除去したと公式に説明している。この後、さらにALPSを改良して、除去率が上がったという報道や公表は存在しない。
つまり、今でも、上に書かれているように環境基準値の2万倍のストロンチウム90が含まれている可能性が強いのだ。
また福島沖の海洋生物が、生物濃縮を起こさないこともありえないことだ。
何度も書いているように、ストロンチウム90はカルシウム代替として、海洋生物が、とりわけ吸収しやすい核種で、ひとたび体内に入ったなら死ぬまで出てこない。
物理半減期が30年なのに、生物半減期が50年という不可解な核種はストロンチウム90だけだ。
そして内部被曝から、糖尿病、膵臓癌、骨癌、白血病などを高い確度で引き起こすのである。
http://hirukawamura.livedoor.blog/archives/5828432.html
日本のラーメン屋は、魚介類の骨を煮出してスープにしている店が少なくない。最高のダシがとれるからだ。
しかし、そこにはストロンチウム90が含まれている。だから、ラーメン屋の店主従業員には、糖尿病や膵臓癌を発症する人が多い。
環境省の魚類データにストロンチウム90は、ほとんどNDになっていると信じている人も多いと思うが、実は、環境省のストロンチウムXサンプリングは、「可食部」だけに分類してから検査するようマニュアルに定められている。
骨は可食部でないので、検査されない。だが、ラーメン屋は、築地に出向いてマグロなどの三枚おろしの真ん中を買ってゆく。そこは生物連鎖濃縮の頂点が分布している場所だ。魚介類のなかで、生態系の頂点にいるマグロの濃縮率は極めて高い。数百万倍といわれている。
だから、魚介系ラーメンを食べている人は、糖尿病から膵臓癌、白血病を発症する確率が非常に高くなるのだ。
福島の「処理水」と称する「放射能汚染水」を大規模に放出することの意味は、汚染水経費を削減して東電の株価を守りたいという目的から来ているのだが、こんな安易な安上がりの方法を選んで、十数年後に健康被害の実態が明らかになり、結局、太平洋漁業をダメにしてしまうだろう。
その損害額=東電の賠償責任は、海洋投棄で得た利益の何百万倍になるにちがいない。
東電も日本政府も、世界中の漁業関係者から超巨額の賠償請求をされて未来永劫、借金地獄にのたうちまわるにちがいない。
そのツケ払いは、我々日本人すべてに回ってくる。
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