私は、1980年代〜1990年代、まだ若くて充実した時代に、日本経済がバブルの絶頂期を体験し、山一証券倒壊を境に、ものすごい勢いで日本社会が崩壊してゆく姿を、ちょうどタクシー運転手をしながら目に焼き付けることができた。

 私は、若い頃から宮本常一の民俗学に傾倒していたので、タクシー運転手として目撃した日本社会民俗の劇的な変遷を学問的な視点で見続けることができて、得たものが大きかったと思っている。
 http://hirukawamura.livedoor.blog/archives/5828612.html

 この当時、今の山口組六代目、司組長と山で出会う縁があったのも、懐かしい思い出だ。
 http://hirukawamura.livedoor.blog/archives/5828334.html

 残念ながら、学歴や権威のない私の見聞は、まだ儒教序列秩序の影響が大きかった当時の日本社会では、ほとんど相手にされなかった。当時、私の意見を雑誌に投稿しても、採用してくれる出版社は皆無だった。たぶん国立大卒あたりの肩書きをつければ採用してくれただろうが、私は一切、経歴を書かなかった。
 せいぜい、新聞の読者の声欄や、雑誌の読者感想欄に採用される程度だった。
 だから、せめてブログに残すようにしたのだが、メインだったヤフーブログは、無断削除を繰り返した末、突然廃止され、私の当時の文章もそのまま消えてしまったものが多い。

 いわゆるバブル時代と、その崩壊とは何か?
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%96%E3%83%AB%E5%B4%A9%E5%A3%8A

 上のウィキリンクには、バブル崩壊は、日本の不景気の通称で、バブル景気後の景気後退期または景気後退期の後半から、景気回復期(景気拡張期)に転じるまでの期間を指す。内閣府景気基準日付でのバブル崩壊期間(第1次平成不況や複合不況とも呼ばれる)は、1991年(平成3年)3月から1993年(平成5年)10月までの景気後退期を指す。  と書かれている。

 しかし、私のタクシー運転手としての実感は、圧倒的に山一証券の倒壊廃業が大きかった。
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B1%B1%E4%B8%80%E8%AD%89%E5%88%B8

 それは1997年だった。たぶん95年くらいから街流しのタクシー営業を行っていたと思うが、その頃、私は、たぶん名古屋ツバメタクシーでトップクラスの売り上げだった。それでも本勤(24時間連続勤務、その後24時間休みのサイクル)手取り30万円はいかなかった。
 だが、山一証券の廃業をきっかけに、街流しのタクシー客が激減したことを強烈に記憶している。
 私の手取りも20万円以下まで落ちたと思う。何せ、名古屋の繁華街を1時間流しても一人の客も見つけられなくなってしまったのだ。

 それまでは、タクシー乗務というのは、結構儲かるものだという印象だった。深夜、栄錦繁華街を流せば、岐阜県くらいの自宅に帰る上客を拾うのはたやすかった。一日の売り上げが8万円を超えるときもあった。その半分が運転手の収入になる。

 私が、人に優しかった日本社会の変質を強烈に感じたのは、1970年代の後半だ。
 当時、住んでいた国立市で、駅前に脚立を置いて、その上で怒鳴っている集団がいた。
 これが当時流行した「自己啓発セミナー」というやつで、「自分がどれほど馬鹿か」ということを公衆の面前で延々としゃべらせるのだ。
 何のために? 企業が社員研修のためにやらせていた。これが「企業戦士」というやつで、企業活動は戦場であって、自分を捨て、恥も見栄も捨て、営業活動=金儲けに全身全霊で打ち込む社員に洗脳する目的だった。

 世はバブル前夜だった。フリードマンの新自由主義が登場し、「金儲けだけが人生と社会価値のすべて」という思想が社会全体に蔓延しようとしていた。
 その金儲けで何をする? 高級車に乗り、タワマン豪邸に住み、株で儲け、美人妻を娶って他人を見下し、優越感に浸るのだ。それが生きる価値というわけだ。
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E8%87%AA%E7%94%B1%E4%B8%BB%E7%BE%A9

 これを世界に拡大し、日本社会にも持ち込んだのは、中曽根康弘、レーガン、サッチャーの三人組であり、その最大の尖兵が竹中平蔵と自民党だった。
 世のテレビ、雑誌、あらゆるメディアも、そんな金儲け最優先思想に追従した。
 社会党や共産党まで、それを肯定するような人物が現れていた。
 バブル時代とは、日本社会が金儲け一色に染まり、ドロドロに腐敗臭を放つ時代だった。

 1980年代バブル時代は、寝ても覚めても金儲けの話ばかり。とにかく大規模な詐欺事件が多かった。
 詐欺を目的とした「法の華」とか「天下一家の会」とか「豊田商事」、宗教団体でも統一教会や幸福の科学は宗教を装った詐欺による蓄財を目的にしているようにしか思えない。私には、創価学会も洗脳詐欺の一種に見えている。

 人々が金儲けに夢中になった時代、70年代の反戦活動家だった私たちは、生きる空間と目標を失っていた。私は人生の目的を見失い、トラック運転手で得た金を風俗に注ぎ込んでいた。人間性も荒廃していった。
 私は、唯一、カネと暇を山登りと民俗学に傾注することで辛うじて自分のプライドを保っていた。
 かつての仲間も、そして自己啓発セミナーの企業戦士も、自分の本来の人間性から乖離した思考法を強要されることで、ノイローゼに陥った者が多かった。
 バブルは、人間性や良心に依存して生きようとする者たちを自己矛盾の地獄に陥れた。

 人間社会の本質は、ゼロサムの世界である。人は蓄財した分、散財しなければならない。「他人を見下す」ことが人生の価値であるかのように洗脳されてみたって、上昇があれば下降がある。発展があれば衰退がある。発生があれば消滅がある。
 すべての人に、平等なカルマの法則=因果応報の法則が与えられている。
 だから、バブル時代がもたらした無理な金儲け思想は、いつかものすごい反動がくる。ちょうどステロイドによるリバウンドのようなものだ。

 そのリバウンドが、来たのが1990年頃だったと思う。不動産による投機が、限界に達し、作りすぎた家が売れなくなった。また、1985年のプラザ合意が、日本の投機熱に冷水を浴びせた。
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%A9%E3%82%B6%E5%90%88%E6%84%8F#:~:text=%E3%83%97%E3%83%A9%E3%82%B6%E5%90%88%E6%84%8F%EF%BC%88%E3%83%97%E3%83%A9%E3%82%B6%E3%81%94%E3%81%86%E3%81%84,%E3%81%AE%E3%83%97%E3%83%A9%E3%82%B6%E3%83%9B%E3%83%86%E3%83%AB%E3%81%AB%E3%81%A1%E3%81%AA%E3%82%80%E3%80%82

 今、中国が陥っているようなバブル崩壊が、1990年頃から日本社会を襲い、ゆけゆけどんどんの経済拡大がリバウンドによって、どんどん縮小させられていった。
 そのバブル崩壊に究極のとどめを刺したのが山一証券崩壊だった。
 それから日本経済に、あらゆる悪循環が始まり、消費税による経済停滞と循環不全が起きて、世界に取り残されていった。

 1990年以降、30年以上経た日本経済は、一度としてバブル時代の熱狂に戻ったことはない。バブル時代の投資家たちは、もう二度と復活することもできなくなった。
 日本社会が外見上、あまり変わらないように見えるのは、バブルとは無関係に、自らの良心に依存して、自らの論理で、金儲けとは無縁に生きてきた人々が大多数だからだ。
 彼らは投機というステロイドに依存しなかったので、リバウンドを起こすこともなかった。
 必要な仕事をし、最低限の生活を守り、決して無理しないで生きてきた人は、たとえバブルが崩壊しても、極端な変化はなかったのだ。

 現在、中国で人類史上最悪のバブル崩壊が始まっている。
 中国共産党は、公称14億人(実は11億人といわれる)中国社会で、公称34億人分(実は40億人分を超えているといわれる)の住宅建設を行い、それを資産価値に変えて投機と蓄財に走った。

 マンションを作り、ドイツ銀行が、それを債権に換えて、切り貼りして世界中の投資家に売り払ったといわれる。もちろん中国人が大多数を占めているので、債務不履行被害の大半は中国人が負うのだが、全体で1京円といわれる債務のうち、数十兆円は、たぶん日本の金融機関も背負い込むことになるだろう。

 中国のバブル崩壊規模は、1990年代の日本バブル崩壊の100〜1000倍の規模といわれる。どんなに溶かし込んでも収拾のつく金額ではない。
 それは中国共産党幹部が、後先を考えずに私利私欲の蓄財に走った最期の結末である。
 世界経済も数千兆円分の債務を背負い込むことになるだろう。
 それは世界経済を根底から崩壊させるのに十分な規模だ。何せ、世界の実体経済は未だに8000兆円しかないといわれているのだ。

 中国一国の債務だけで、それよりもはるかに多いのだ。
 金融の要となったドイツ銀行は、もしも潰したら何もかもカオスに陥るという理由からのみ現在も生かされ続けているが、実態はとっくの昔に潰れている。
 これから、そのカオスが表の経済を直撃することになる。
 中国は、一切の輸出入が不可能になる。ナショナルやトヨタ、村田電気など中国進出日本企業もすべてを失うだろう。

 もう中国には経済復活のあらゆる手段が存在しない。ただ無限の崩壊だけが待ち構えている。だから、習近平政権に残されている手段は、戦争に紛れ込ませて何もかも破壊してしまうことだけだ。内憂を外患に転嫁する以外のいかなる手段もない。

 もう中国という国は、恐ろしい戦乱の後、完全崩壊するしかない。たぶん暫定的に8つの国に分裂するだろが、その後も崩壊が続く。最終的には、数百の自治政府に分散してしまうかもしれない。
 周辺国を巻き込みながら、ものすごい数の犠牲者を出すことだろう。
 残されるのは、戦後の焼け野原のような荒廃だけだ。発展という夢の跡だけだ。

 何度も言うが、我々の宇宙はゼロサムである。
 発展があれば衰退がある。上昇があれば下降がある。生成があれば消滅がある。
 やったことのカルマは寸分の狂いもなく、自分自身を襲ってくる。
 他人に危害を加え、殺したりすれば、その運命は100%自分に降りかかってくる。
 中国は、強欲の極致を求めたことにより、自分たちを滅ぼしているのだ。それは世界史に初めて現れるほどの凄まじい規模だ。
 日本のバブル崩壊の100〜1000倍の規模の後始末が中国人に襲いかかろうとしている。