正力松太郎が作った日本最初の原発が東海第一原発である。運営主体は「日本原子力発電=原燃」、9電力による合同企業であるが、実態は東電の子会社の様相を呈している。
 東海第一は1966年に営業運転開始、1998年に運転終了して、2001年から廃炉作業に入り、2017年に廃炉完了予定だった。
 ところが、2023年、日本原子力発電(電力各社の共同出資)は、廃炉完了予定について4回目の延長を発表し、2035年と発表した。

 東海原発、廃炉完了は5年先の「2035年度」に 延期は4回目…当初は「2017年度」だった 東京新聞 2023年12月23日
 https://www.tokyo-np.co.jp/article/297775

 東海原発の原子炉は、日本ではたった一つしかない英国製の黒鉛減速炭酸ガス冷却型原子炉(GCR)で、黒鉛ブロックの形状を六角型(蜂の巣)に改良し、耐震性を高めているとされた。
 立地である鹿島灘臨海地帯は、世界の地震の一割を引き受けている日本列島のなかでも、最大級の地震多発地帯であり、巨大地震の常襲地帯だったので、耐震性の弱いとされた圧力容器のない黒鉛ブロック冷却炉の導入は、極めて危険なものだった。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E6%B5%B7%E7%99%BA%E9%9B%BB%E6%89%80

 にもかかわらず、正力松太が黒鉛路を選択した理由は、当時(1961〜1963年)米ソ仏中が、大気圏核実験を競いあっていた時代であり、日本も秘密裏に核保有に走っていた。日本に核兵器を導入するためには、核取扱技術者=専門家を増やさねばならなかった。
 そこで正力は「平和利用」を口実に、原発を運転しながら核ミサイル用プルトニウムを蓄積する戦略を組み立て、もっともプルトニウムを得やすいといわれた黒鉛炉を選択したのである。

 計画された1960年前後は、すでに世界の原子力発電の主流はBWR=沸騰水型原子炉で、黒鉛炉のメリットといえば、プルトニウム蓄積しかなかった。
 22年間運転されて、プルトニウムのたっぷり蓄積された使用済み核燃料は、六ヶ所村再処理工場に運ばれて核ミサイル原料になる予定だったが、未だに成功せず、六ヶ所村は30兆円をドブに捨てて、さらに同程度の廃炉費用が必要と試算されている。

 プルトニウムは、白金族を生成するため、王水でも溶けず、純銀溶解炉もピンホールの連続で溶解の目処が立たないのである。世界でもMOX溶解に成功している国はフランスだけとされ、英国は撤退した。しかし、フランス、ラアーグ再処理施設では、恐ろしい放射能公害が起きている。
 https://mainichi.jp/articles/20230105/k00/00m/020/246000c
 六ヶ所村再処理施設には、使い道のない大量の白金族が生成されているので、指輪やネックレスに加工して原子力推進関係者に進呈したら喜ばれるのではないだろうか?

 東海原発の廃炉予算は、当初「原子力発電施設解体引当制度」により、200億円程度が想定されていたはずだが、2023年時点で822億円に膨れ上がっている。
 もちろん、これもその場しのぎのでまかせにすぎず、実際には、フランスにおける廃炉費用が、一基1兆円を超えると報告されているので、それに準じた金額になるだろう。

 ただし、この報道は数ヶ月で、あらゆるネット情報が削除されてしまった。「廃炉にめちゃめちゃに金がかかる」という情報は、原子力産業にとって困ったものなので、無理矢理消してしまったのだ。
 ちなみに、フランスは今では、高速炉廃炉費用が1000億円と表明しているが、信じる者は誰もいないだろう。実際には数十兆円でも不足するはずだ。
 https://news.ntv.co.jp/category/international/343699

 日本ではNHKが廃炉費用の平均が577億円と報道したが、これも真っ赤なウソだ。
 https://www3.nhk.or.jp/news/special/sci_cul/2019/05/news/news_190502/ 日本でも、廃炉は事実上不可能か、または1兆円を超えると考えられる。

 日本には54基の原子炉が存在し、3基の原子炉が建設中、10基が運転中である。このうち約半数が、当初、耐用年数とされた40年に迫っているので、廃炉が約束されているが、国と関西電力は、耐用年数を無視して1974年・75年運転開始の高浜原発について、根拠もないまま寿命を60年以上に延伸して運転を容認させた。
 60年超運転が認可された原子炉は、おそらく世界で高浜原発しかないだろう。

 原子炉は、廃炉と決めて運転を停止させれば施設を撤去できるような代物ではない。
 数十年の核分裂運転は、莫大な中性子を発生させ、それが周辺の構造物に潜り込んで、恐ろしいアイソトープに変えてしまうのだ。これを「放射化」という。

 例えば、圧力容器には厚さ20センチ以上の鍛鉄が使われているが、これに中性子が当たると鉄がコバルト60に変化する。
 コバルト60には、1.17 1.33MeVという2本の強烈なガンマ線を発する。これは厚さ10センチの鉄をも貫通して、鮮明なガンマ線透過写真を撮影できるほどの高エネルギーだ。

 核燃料を搬出後も、施設を解体するどころか、被曝を恐れて近寄ることさえできない。
 コバルト60の半減期は、5.3年、千分の1に減衰するのに半世紀はかかる。半世紀後でも、たぶん直接、容器に触れることができないほど危険な性質を持っている。

 実は、中性子は、ほぼすべての原子の性質を変えてしまい、多くがアイソトープとなる。中性子の当たった、あらゆる物質がアイソトープに変化しているので、なかにはコバルト60のような危険なガンマ線を発するようになるものがある。
 例えば、塩のナトリウムに当たると、ナトリウム24になって、2.745MeVという物質最大級の恐ろしいガンマ線を出すようになる。JCO事故では、20Km先まで中性子が飛んで台所の塩や人間の血液や尿にNa24が検出された。
 https://news.yahoo.co.jp/feature/1259/

 中性子は見境なく周囲を放射化するので、圧力容器だけでなく、黒鉛ブロックも、コンクリートも、金属類もみんなアイソトープに変えてしまう。
 東海原発の原子炉は黒鉛ブロックを積み重ねてできているが、中身は炭素であり、放射化されると炭素アイソトープに変わる。
 炭素14は、地球なみの寿命だが、これが物質の起源や生成年齢を調べる大切な標識元素なので、環境中に放出されると、これまでの年代測定法が大混乱に陥る。
 また弱いベータ核種だが、生物構成基本物質なので、内部被曝による生物毒性も著しい可能性がある。

 たくさんの原子炉部材が危険なアイソトープに変わっている可能性があり、簡単に取り扱えるものではない。
 結局、放射化による放射能が、無害化するまで、数十年〜数百年を必要とする。
 これが、東海原発が、4回も廃炉を延期し、完了を2017→2035年に変えた本当の理由である。

 実は黒鉛炉内部に使用済み核燃料の残渣があり、それは超危険な、アクチノイド・マイナーアクチノイド核種が多いので、近寄ることさえできないのだ。
 プルトニウム239の半減期は24000年であり、ほぼ消える1000分の1減期は24万年である。もし黒鉛ブロックに大量のプルトニウムが付着していたなら、数万年も触れないことになり、2035年どころか、3000年代になっても困難なのだ。

 被曝を恐れないAIロボットが開発されて、すべての作業がAI化されるなら可能と、たぶん原子力産業は考えているだろう。
 だが、フクイチ事故始末の経験から、AIロボットは強力なガンマ線で全滅させられた。
 理由は、電気電子系統がガンマ線で変質を起こすからだ。電気線被服など瞬時にガンマ線浸食を受けてしまう。

 そもそも、中津川市蛭川に住む、私のプラスチック類が、すべて土地の花崗岩ガンマ線によって重合や分解などの破壊を受けてしまい、自転車のタイヤでさえ数年でコードがむき出しになって破裂してしまうのだ。
 原子力産業は、そんなガンマ線による恐ろしい重合分解を知らなかった。まだ放射能や放射線のことをろくに知らない自称エリートたちが、知ったかぶりで、対策のできない放射能操作に暴走しているのが、原発の本質である。

 被曝の恐ろしさも知らない、伴信彦のような東大出を自慢する自称学者が、自分の勝手な思い込みだけで、「フクイチ事故で、子供たちの甲状腺被曝障害は一人も出ない」と堂々とツイッター(@buvery)で決めつけていた。
 そして、福島の子供たちを絶対に避難させずに、被曝させたまま過ごさせるエートスプログラムを実行し、原子力安全規制委員会、委員に収まった。

 次の会長は、伴信彦である可能性が高い。こんな自尊心だけのクズが、根拠の存在しない原子炉の寿命延伸を勝手に決めているのだ。
 原子力は、1940年代の開発当初から、ただの一度も、放射性物質の処理に成功していない。放射性廃棄物を安全に変える技術など持ったことはない。
 また安全な廃炉技術を確立したこともない。
 ただ核兵器欲しさに、危険性への警告を無視して、稼働を続けてきたのだ。

 それはパンドラの箱であり、必ずチェルノブイリやフクイチのように、牙をむき出しにして人類に襲いかかって滅ぼそうとするのだ。
 原子炉の廃炉には、一基1兆円規模の費用がかかることが明らかにされている。
 現在、日本で原子炉を所有し稼働させている企業で、廃炉費用を捻出できる経済力を持った企業は皆無である。

 だから、関西電力のように超老朽原発をたくさん抱えた電力企業は、ただ、フクイチ事故のような破局事故が起きるのを待って、国に始末を押しつけることだけを考えている。
 経営陣は、国に始末を押しつけて、高額の退職金を得てドバイに逃げることしか考えていないのだ。東京電力フクイチ事故が、その見事な先例を作ってくれたからだ。

 原発は日本を完全破壊する巨大事故を繰り返して終わりを迎える 2023年11月04日
 https://hirukawamura.livedoor.blog/archives/6083849.html

 我々は、超老朽原発である高浜原発が崩壊し、京都という千年の古都が、放射能汚染によって永久に立入禁止になる姿を、まだ生きているうちに目にしなければならないかもしれない。