トランプの時代錯誤の暴走 : 東海アマのブログ

　ドナルド・トランプが、2025年1月20日に、米国大統領に就任するにあたって、さまざまな構想を発表しているなかで、世界を震撼させる、とんでもない暴走発言が飛び出した。

　グリーランドとパナマ運河を米国が領有する。もし従わなければ高額の関税をかける。さらに武力の行使も否定しないと発言したのだ。
　https://www.youtube.com/watch?v=CqCMWGo-KHQ

　またカナダの領有についても触れている。カナダ国民の意思とは無関係に、米国52州に組み入れる可能性を示した。
　この報道は、すでに昨年末に行われたが、今回は、「武力行使を否定しない」との発言によって、一気に国際的緊張を増す深刻なものになった。
　
　トランプ政権成立で何が起きる？　2024年12月29日
　https://hirukawamura.livedoor.blog/archives/6181694.html
　
米トランプ氏「グリーンランドの所有権放棄しなければデンマークに関税」1/8
　https://news.yahoo.co.jp/articles/de3ee404298314ea2d06c951efaa9138d271d148

　「メキシコ湾」を「アメリカ湾」に　トランプ氏が名称変更を主張　1/8(水)
　https://news.yahoo.co.jp/articles/860215a3e7a92bc90b1f0783b6f8cbf7e9dd55f9

　カナダは米国に吸収を　トランプ氏改めて主張「一緒になれば素晴らしい国家に」2025/1/7
　https://www.sankei.com/article/20250107-CJXADQCFQ5NQHOBTMCOF76YIM4/

　トランプは、国際法に関する知識がほとんどないようだ。
　今回のトランプ発言は、明確に国際法、領土関係法に違反していて、いわば国家犯罪行為を宣言したに等しい。すでに、いくつかの条約で相互承認されている歴史的な取り決めを真っ向から破ると宣言したのだ。
　さすがに、世界中の国家指導者がぶったまげたといっていい。

　国際法を守らないで武力行使による領土併合を進める指導者が、プーチン、習近平に続いて世界最大武力国家の支配者になるトランプも、その意思を表明したことで、世界は、恐ろしい事態に進もうとしている。
　我々はまるで15～17世紀の帝国主義侵略時代の再現を見せつけられているようだ。

　国際法とは何か？
　https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E6%B3%95

　国際法の一般原則がある。これは、条約や慣習法の諸規則を通じて実定国際法に浸透した一般国際法上の原則である。

　「友好関係原則宣言」（国連総会決議2625 (XXV) 、1970年10月24日）に従えば、以下の原則が国際法の一般原則として確立しているといえる。

　(1)国際関係における武力の威嚇と行使の禁止の原則（第一原則）
　(2)国際紛争の平和的解決の義務の原則（第二原則）
　(3)国内管轄事項への不干渉義務の原則（第三原則）
　(4)国々が相互に協力する義務（第四原則）
　(5)人民自決の原則（第五原則）
　(6)国の主権平等の原則（第六原則）
　(7)国連憲章の義務の誠実な履行の原則（第七原則）

　今回のトランプ発言は、第一原則の「武力による威嚇・行使の禁止」則に反する発言である。
　デンマークに対して、「アメリカのグリーランド領有を認めなければ、高額の関税を課し、武力行使も否定しない」と発言したため、明らかな威嚇であり、国際法違反である。

領土不拡大の原則
　https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A0%98%E5%9C%9F%E4%B8%8D%E6%8B%A1%E5%A4%A7%E3%81%AE%E5%8E%9F%E5%89%87#:~:text=%E9%A0%98%E5%9C%9F%E4%B8%8D%E6%8B%A1%E5%A4%A7%E3%81%AE%E5%8E%9F%E5%89%87%20%EF%BC%88%E3%82%8A%E3%82%87%E3%81%86%E3%81%A9%E3%81%B5%E3%81%8B%E3%81%8F%E3%81%A0%E3%81%84%E3%81%AE%E3%81%92%E3%82%93%E3%81%9D%E3%81%8F%EF%BC%89%E3%81%AF%E3%80%81%20%E3%82%AB%E3%82%A4%E3%83%AD%E5%AE%A3%E8%A8%80%20%E3%82%84%20%E5%A4%A7%E8%A5%BF%E6%B4%8B%E6%86%B2%E7%AB%A0%20%E3%81%A7%E7%A4%BA%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%9F%20%E7%AC%AC%E4%BA%8C%E6%AC%A1%E4%B8%96%E7%95%8C%E5%A4%A7%E6%88%A6%20%E3%81%AE,%5B1%5D%E3%80%82%20%E6%97%A5%E6%9C%AC%E6%94%BF%E5%BA%9C%20%E3%81%AF%E3%81%93%E3%81%AE%E5%8E%9F%E5%89%87%E3%81%AB%E5%9F%BA%E3%81%A5%E3%81%8D%E3%80%81%20%E5%8C%97%E6%96%B94%E5%B3%B6%20%E3%81%AE%E8%BF%94%E9%82%84%E3%82%92%20%E3%82%BD%E9%80%A3%20%28%E7%8F%BE%E3%83%AD%E3%82%B7%E3%82%A2%29%E6%94%BF%E5%BA%9C%E3%81%AB%E6%B1%82%E3%82%81%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%20%5B2%5D%E3%80%82

　現代の国際社会で、国際法は領土に関する法的問題を扱っている。この領土法は、第二次世界大戦において、連合国が新たに領土を獲得しないとする原則は、大西洋憲章とカイロ宣言で示された。
　大西洋憲章は1941年8月14日に署名され、第1項と第2項で「戦争によって領土その他の拡大は求めない」という原則が記されている。
　https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E8%A5%BF%E6%B4%8B%E6%86%B2%E7%AB%A0

　①アメリカとイギリスは領土拡大を求めないこと
　②領土の変更は、関係国の国民の意思に反して領土を変更しないこと
　③全ての人民が民族自決の権利を有すること
　④貿易障壁を引き下げること
　⑤全ての人によりよい経済・社会状況を確保するために世界的に協力すること
　⑥恐怖と欠乏からの自由の必要性
　⑦海洋の自由の必要性
　⑧侵略国の軍縮と戦後の共同軍縮を行うこと。

　カイロ宣言は1943年11月に発表され、連合国は領土不拡大の原則を示すとともに、日本が第1次世界大戦で得た太平洋の諸島や満州、台湾、朝鮮、暴力や貪欲により略取した地域などから追い出さなければならないと表明した。
　https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%82%A4%E3%83%AD%E5%AE%A3%E8%A8%80

　日本は、現在、三カ所で領土を侵犯され、二カ所を不法占拠されている。北方領土・竹島、そして尖閣諸島である。
　これが不法行為である根拠は、上の大西洋憲章とカイロ宣言、サフランシスコ平和条約、日ソ共同宣言によっている。
　したがって、ロシアと韓国は、日本にとって領土侵略占拠の敵国ということになる。日常的な領海侵犯を繰り返す中国も、軍事衝突の危機を孕む明らかな敵性国家である。
　ロシアが逆の立場なら、間違いなく戦争に至っているだろう。

　こうした領土問題の法的根拠になるのは条約だが、大西洋憲章に示された
　【領土の変更は、関係国の国民の意思に反して領土を変更しないこと】
　という規定が、もっとも重要であり、国際慣習法として定着しているといえる。
　ところが、トランプは、グリーンランド・パナマ・カナダ国民の意思など何一つ問題にしていない。「アメリカの安全保障のために必要だ」と、一方的にアメリカの国益だけを併合の理由に挙げている。

　トランプは関係住民の意思を無視して、アメリカの国益だけを理由にして、軍事侵攻も辞さないという姿勢を示した。
　我々が21世紀を迎えるとき、このような17世紀的な帝国主義思想の再現が、よもや起きるとは想像もしなかった。

　2022年プーチンが、突然ウクライナに軍事侵攻をかけて領土強奪を図ろうとした事態など、ほとんど予想した者もいなかった。明らかな時代錯誤だったからだ。
　その後、ロシアは、世界の敵として、強力な経済制裁をかけられているが、似たような独裁権力国家である中国が、ロシアを支援することで、ようやく息を継いでいる。
　中国も、台湾軍事併合の野望を隠さないでいて、もしも実行されたなら、世界は第二次世界大戦前に似た緊迫した状況になるだろう。

　トランプの国際法を無視した暴走発言に対し、1日明けて世界中から反発表明が続いている。
　
　トランプ氏のグリーンランド領有めぐる発言うけヨーロッパの首脳ら「国際法に違反する」と反発　2025.01.09
　https://newsdig.tbs.co.jp/articles/withbloomberg/1656625?display=1

　仏外相「ＥＵは領土への攻撃容認せず」　グリーンランド巡るトランプ氏発言で
By ロイター編集　2025年1月8日
　https://jp.reuters.com/world/us/OO4NDY5ASFNI3JRR5MK7XZH7UA-2025-01-08/

　このトランプ暴走発言は、おそらくアメリカ国内のトランプ支持者の数割にも絶望的不快感を与えた可能性がある。今、大統領選が行われたなら、トランプは数割の支持を失う可能性がある。
　この発言が、どんな必然性から来ているのかを考えると、「アメリカの防衛のためにグリーンランド領有が必要」とする主張に対しては、「領有など必要ない……グリーンランドとの友好関係を保てばよいだけのこと」と反論がある。

　結局、トランプは、自分自身のナルシズムを満足させるに必要な、「世界最大国家の王として君臨する」という野望＝自己満足が原動力になっているというしかない。
　現在のアメリカに、グリーンランドとカナダの領地を加えれば、世界最大の領土を持つロシアを大きく抜き去る「世界最大国家」になるのだ。
　おそらく、プーチンにも習近平にも同じ、「世界最大国家」への野望があり、それが戦争をもたらしているのだろう。

　人々を幸せにするのでなく、「自分が一番！」という独占欲、お山の大将欲、利己的な強欲に突き動かされているとしか見えない。
　このような低俗愚劣な人間性の人物ばかりが、アメリカ・ロシア・中国という大国のトップに君臨している現代社会は、まさに不幸というしかなく、まさしく「宇宙で二番目に遅れた星」を体現している。

　トランプは、似たもの同士のプーチンと、とても仲が良い。プーチンの利権に寄り沿って、ウクライナのNATO加盟に反対する意思を示し始めた。
　そして、NATO加盟諸国に、現在の数倍（GDP比5％）もの分担金を求める意思を示してきた。
　https://www.youtube.com/watch?v=M9yXkQwtn7w&ab_channel=TBSNEWSDIGPoweredbyJNN

　日本に対してはGDP比3％の安保分担金を要求するといわれ、その額は、現在の分担金の10倍に達するので、日米安保条約は廃棄するしかなくなり、旧NATO諸国と連携して、新たな安全保障条約を新設するしかないだろう。（もちろんデイーラーのはったりが含まれてはいるが……）
　これは、NATO諸国をアメリカから離反させ、NATO解体につながる動きだが、一方で、EUも、アメリカを除外した、新たなNATOを結成する可能性をもたらすだろう。
　トランプによって、アメリカは完全な孤立化の道を歩むことになる。

　トランプ氏、ウクライナのＮＡＴＯ加盟に反対するロシアに理解　2025年1月8日
　https://jp.reuters.com/world/ukraine/A246KKWC4FIYDEBXJTZOU4BBRA-2025-01-07/
　
　　トランプは、1月20日の大統領就任後、数日でウクライナ戦争を終わらせると公言している。現在の領土を固定し、クリミア・ドネツクをロシアに明け渡したまま、プーチンと会談し、戦争を終わらせるという。
　関係国民の意思の尊重は、どこにも表明されていない。

　おまけにNATO進駐軍による戦後監視システムにも好意的でない。ウクライナのNATO加盟にも反対する。これではロシアによる侵攻の歯止めが存在しない。
　ウクライナにとっては踏んだり蹴ったりの内容で、ゼレンスキーへの支持率が下がる一方だ。
　https://news.yahoo.co.jp/articles/fc2fed95a1d5b39e1b5905a39e68103d0f08cf47

　トランプは、2018年大統領時代にユダヤ教徒に改宗していて、福音派やモルモン教、エホバなどと共通する、女性の妊娠に関する自己決定権の否定、人工中絶禁止を前面に押し出しているため、アメリカの人権派女性による支持率は著しく低い。
　トランプを支持する者の大半が、保守派の男性ということになっている。
　トランプは、領土問題だけでなく、生活思想全般で、国民、民衆の自発的意思をコントロールし、尊重しない独善的姿勢を見せている。

　「女性を守りたい。望もうが望むまいが」トランプ氏の発言に女性反発。「叩いてやりたい」という声も　スタッフから不適切だと言われても「女性を守る」と発言したトランプ氏。女性からの批判を招いています　2024年11月01日
　https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_67244f06e4b01f6919d9949e

　トランプによる「女性を守る」という内容は、女性に自発的中絶をさせないことや、強姦妊娠であっても、中絶を禁止するなど、女性の人権を無視する内容が多分に含まれている。
　これで、今回の発言と併せて、トランプの女性から支持は圧倒的に減少するだろう。　実は、トランプのような、強硬な保守派男性の女性への弾圧的姿勢は、日本でも問題になっている。

　日本保守党の百田尚樹代表が、日本の出生率を上げるため、30歳になった女性に子宮摘出を行うと発言した。本人は仮定の冗談と否定しているが、普段からそう思っていなければ出てこない発言だ。

　日本保守党、百田尚樹代表が30歳を超えた女性は子宮摘出と発言　2024年12月18日
　https://hirukawamura.livedoor.blog/archives/6180277.html
　
これに対して、人権派女性から激しい反発が出ている。百田は、女性を男のための道具としか見ないトランプの同類とみられているからだ。
https://www.ourplanet-tv.org/50036/

　今回のトランプの領土強奪発言は、トランプの有言実行ぶりの過去から、本当に実行される可能性が高いとみられている。
　デンマークに対する高額の関税が実施される。

　EUのNATO加盟国には、GDP比5％のNATO分担金が求められる。これでは国家の存亡にかかわる事態であり、NATOを解体させる原因になってしまう。
　日米安保分担金も、GNP比3％が示されていて、韓国、台湾とともに、負担率が10倍以上になってしまい、安保体制が崩壊してしまう。
　ディールが大好きなトランプは、習近平やプーチンと直接取引すると表明していて、あたかも、地球社会をアメリカ・中国・ロシアの三カ国だけの取引で支配するような構想を持っているらしい。

　台湾併合を阻止するため、尖閣諸島を中国に献上するかのような姿勢を示したこともある。
https://www.sankei.com/article/20170508-MBVXZN6KM5NGJKPSO7QHVJEH3Q/

　一連のトランプによる時代錯誤の発言は、結局、アメリカの孤立化を招き、世界中の女性たちの反発を招く結果をもたらす可能性が大きい。
　トランプ新大統領は、世界を敵に回して、利己的なアメリカンファースト、マイファーストに進むことが約束されたようなものだ。

　しかし、日本で、そんな利己主義の強欲トランプ大統領に期待する声があることには驚愕させられる。一体トランプの何を見ているのか？　と私は憤るしかない。
　アメリカでは、こんな独善、独裁トランプを支持してきた層が、トランプ政権からの離反を表明し始めている。

　トランプ氏の支援から「脱退」　1年の葛藤、誤情報に気づく難しさ
　https://www.youtube.com/watch?v=ZSnRVqNYTX0

　結局、トランプ政権を支持する主体は、イーロンマスクら、トランプの大統領権限を利用して何らかの金儲けをしたいというグループと、福音派の超保守派男性ということになる。彼らは、イワン雷帝のような領土拡張思想が大好きなので、アメリカの膨張を支持する可能性がある。

　トランプ・習近平（張又侠？）・プーチンの三羽ガラスの行く末は、結局第三次世界大戦に行き着くしかないように思える。

　
　