私の住む中津川市は、リニア中央新幹線の岐阜県駅が建設される予定になっている。
私は、岐阜県駅建設予定地である中央西線、美濃坂本駅から4Km程度の場所=青木に、祖母から受け継いだ土地を所有している。
しかし、リニア新幹線の計画が発表された2011年頃から、今に至っても、地価の値上がりはほとんどない。
当初、陸軍射爆演習場だった青木は、祖母が60年前に購入してからも路線価は変わらず、最低の坪1000円のままで、実売価格も、ゴルフ場が隣にできたせいもあるが、ほぼ上がらない、たぶん坪3000円程度で売買されている。
実は、この土地は、祖母が「原野商法」に欺されて購入したものだった。
リニア岐阜県駅が徒歩1時間の場所にできるというのに、地価が上がらないのはなぜか?
おそらく、不動産関係者の間では、リニア中央新幹線の建設完工=開通を信用していないのではないだろうか?
現在居住しているのは、反対側で徒歩2時間の場所だが、そこも、まったく地価が上昇する気配がない。もちろん路線価は坪1000円のままだ。
リニア新幹線工事そのものは、すでに2年ほど前から進められ、瀬戸トンネルの掘削が、たぶん終わり、苗木トンネルに入っているはずなのだが、ダンプトラックの通行量が予想よりはるかに少ない。
駅舎周辺道路の整備も進んでいる。しかし、これは仮にリニアが幻に終わっても役立つものだから、美乃坂本駅整備事業として進められているのだろう。
私は、趣味的に中津川市の各地の土壌放射線量を測定したことがあるのだが、苗木トンネル付近は、日本最大級の自然放射線地帯である。少なくとも、311前は日本一環境放射線の高い場所だった。
昔は、どこを掘っても水晶トパーズが出土するといわれた地域だが、トリウム系花崗岩脈があり、もしも、ここを掘ったなら、ウラン鉱山なみの恐ろしい放射線土砂が莫大な量出るはずと予想していた。
どれくらい強いかというと、GM計で毎時1マイクロに近い線量が出ていた。環境放射線量の基準値は、福島事故後の改悪後でも毎時0.23マイクロシーベルト程度だから、 その数倍の線量があった。この残土は、完全に環境放射線基準値に抵触するものだ。人家の近くには決して捨てられない。
だから、私の知る限り、福岡町や付知町の花崗岩切り出し跡地や深い山の中に捨てているはずだ。おそらく地元に線量は伏せられているはずだ。
リニア新幹線は、大部分を地下100メートルに近い大深度にトンネルを掘るので、全体の残土は膨大なものになる。一説では東京ドーム4000杯分だという。JR東海は、この残土処理を一切計画に含めないまま、行き当たりばったりで工事を始めてしまったらしい。
だから、今になって高線量残土が出て処分地が定まらず大騒ぎをしたらしい。この処理に関する情報はJR東海側の説明で「問題ありません」というだけで、具体的な情報は完全に封鎖されたままだ。
実は、こうした長大トンネルを掘れば、必ず、地下水脈に当たる。この水脈は、地方自治体の水源を含んでいる場合が多いので、上水道や河川に水涸れを生じさせて大変な事態を引き起こす可能性がある。
また、地表面からトンネルまでの土や岩石の厚みを「土被り」というのだが、これも、南アルプス予定地では深さ1400メートルという、日本の土建業界が一度も経験したことのないような恐ろしい条件を掘り進まねばならないのに、データがないのだ。
https://trafficnews.jp/post/59456
さらにオマケとして、このトンネルは、南アルプス市から塩見岳の直下を経て、下伊那群大鹿村に抜けるのだが、そこには中央構造線そのものである国道152号線(秋葉街道)の巨大な壁がある。
それは、青崩峠・地蔵峠・分杭峠と呼ばれ、中央構造線による破砕帯のため、半世紀前から日本土木技術の総力を挙げても、未だに計画線が開通できない超難関地形なのだ。
つまり、中央構造線が絶えず動いていることにより、巨大な崩落帯、破砕帯ができて、トンネルを掘ろうとすると、どんどん移動していってしまい、崩落が起きる。
こんなところに、時速500Kmで走行するリニア新幹線のトンネルを掘ろうというのだ。これは人類史上でも屈指の難工事になり、戦後最悪の難工事といわれた鍋立山トンネルや清水トンネル、丹那トンネル、飛騨トンネルよりも、さらに悪条件が約束されている。
こうした難工事は、多くの場合、巨大断層が関係していて、鍋立山もフォッサマグナだった。
おそらく、完工するとしても、数十年かかるだろうし、完工したトンネルが中央構造線の活動によって、破断するリスクも極めて大きい。実は、日本の土建業界が最大の能力を持っていたのは、1980年前後である。今は、当時より機械は進化したが、能力は、むしろ劣っている。
ゆえに、トンネル工事の専門家の多くが、この大鹿村トンネルの完工を懐疑的に見つめている。
ネット上には、このことも含め、トンネル工事が難事業であることに加えて、JR東海の杜撰な計画により、漏水問題で進退窮まるだろうという解説がたくさん出ている。
いくつか紹介しておこう。
リニア中央新幹線は要らない!21世紀最大の負の遺産とならないか? 樫田秀樹 2018/03/30
https://imidas.jp/jijikaitai/a-40-127-18-03-g725
JR東海が進めるリニア中央新幹線は、国から3兆円の融資を得る超巨大事業になった。工事の入札ではスーパーゼネコン4社の談合が疑われ、大林組の社長が辞任、東京地検は鹿島建設と大成建設の幹部を2018年3月逮捕した。
工事に伴う膨大な残土、地下水脈を断ち切る水枯れ、住民の立ち退きなど、リニア建設が環境や社会生活に及ぼす影響はちゃんと検証されているのか? そもそもリニアが必要なのか? リニア新幹線を長年取材してきたジャーナリスト・樫田秀樹氏がその問題点を指摘する。
トンネルを掘った東京ドーム50杯分の残土をどこへ持って行くのか?
総工費9兆円。史上最大の鉄道事業となるJR東海の「リニア中央新幹線」は、時速500kmで、2027年に品川(東京都)から名古屋(愛知県)までを40分で、2037年には大阪までを67分で結ぶという計画だ(直行便の場合)。いずれも東海道新幹線の半分以下の移動時間だ。気になる料金も、東海道新幹線「のぞみ」の料金と比べると名古屋までなら700円、大阪までなら1000円だけ高くなるとされている。
新幹線とは縁がなく都心までの移動に数時間を要する山梨県や長野県では、「観光客が増える」「若い人も故郷にいながら都市通勤できる」と計画に期待する人は少なくない。計画沿線周辺の経済界もリニア開通による経済効果を兆単位だと熱い期待を寄せている。
だが、捕らぬ狸の皮算用ではないが、リニアを巡る諸状況を冷静に分析すれば、JR東海が目指すリニアの2027年開通は難しいと私は考える。同時に、JR東海の計画推進のやり方は環境破壊や地域破壊を招きかねないことも訴えたい。
その最大理由の一つは「残土」だ。
リニアでは、品川―名古屋間286kmのうちトンネル区間が86%も占めるが、その掘削工事では約5680万立方メートルという東京ドーム約50杯分もの膨大な残土が排出される。ところが、その処分先がまだ2割台しか決まっていない。つまり、処分先が決まらないことにはトンネルも掘れない。
事実、リニア計画(品川―名古屋間)は2014年に事業認可されたのに、JR東海は、準備工事(測量、資材ヤード建設、非常口建設など)は進めていても、未だに本丸であるトンネル建設にはほとんど着手できないでいる。
残土処分地が決まらない理由の一つに各地での反対運動がある。特に長野県。JR東海が処分先の候補地と睨んだ地域では、「沢の上流に置かれた残土が土砂崩れを起こしたら大変なことになる」との反対の声が上がっている。
たとえば、大鹿村を含む天竜川流域では1961年(昭和36年)に犠牲者136人を出す集中豪雨災害「三六(さぶろく)災害」が起きたが、その恐怖を今も忘れない松川町生田区の住民は反対組織を結成し、反対声明を出し、その姿勢に町も同調し、JR東海に「住民理解が得られなければ、残土置き場設置に(町として)反対の結論もあり得る」との要望書を提出した。豊丘村小園(おぞの)地区でもやはり土石流を恐れる住民が署名活動を展開し、多数の署名を集めた結果、JR東海は残土処分計画を撤回した。
これが税金を使う公共工事ならば、あらかじめ残土の処分先を決めないと事業は認可されないが、リニア計画はJR東海の民間事業であるためにそれは求められない。とはいえ、JR東海の見込みは甘かった。JR東海は「処分先は都県を窓口に調整する」との姿勢に終始し、ついに一カ所の処分先も決めないままで事業認可を受けたのだ。
だがその都県が膨大な残土を処分できる候補地をなかなか見つけられないという現状が、リニア工事の進捗を遅らせている。JR東海の計画では1年以上も前に掘削を始めているはずの南アルプストンネル工事にしても、未だに本格掘削には至っていないのだ。
トンネル工事で地下水脈が断ち切られ水枯れが起こる
「水枯れ」も無視できない問題だ。
2027年開通予定のリニアだが、じつは、1997年からリニア走行実験を運用してきた山梨県にある山梨リニア実験線(42.8km)は、そのままリニア営業本線を兼ねるため、リニアは実質的には7分の1は完成している。その実験線周辺で起きた問題の一つが水枯れだ。
実験線の建設工事が始まったのは1990年。実験線もその8割がトンネル工事だったため、各地で地下水脈が断ち切られ、その数年後から各地の川が枯れた。
たとえば、大月市朝日小沢地区では、1994年に簡易水道の水源の沢が枯れた。2011年には、上野原市無生野(むしょうの)地区の棚の入沢(たなのいりさわ)が枯れた。
ひとたび水枯れと工事との因果関係が認められれば、JR東海は地元に代替井戸や貯水タンクを設置する補償措置を講じる。ただし、国土交通省の通知「公共事業に係る工事の施工に起因する水枯渇等により生ずる損害等に係る事務処理要領の制定について」に基づき、補償期間は最大で30年。つまり、31年目からは自分たちで何とかしろということだ。
この意向に無生野地区の若者である有馬孔志さんは「僕らはあの川で遊んで育った。補償も中途半端だし、何よりもあのうまい水や魚たちを返してほしい」と不快感を露わにする。
今後のリニア工事でも、286kmのうち86%もがトンネル工事となる以上、長区間での水枯れが起こると予想されているが、JR東海は2014年に公表した「環境影響評価書」(環境アセスメントの結果報告や工事概要を記した報告書)や各地での住民説明会で、ほとんどの地区の水資源について「影響は小さいと予測します」と説明している。「覆工コンクリートや防水シートの設置、薬液注入などの施策」を実施するからと。
だが実験線での水枯れを知ってしまった住民はこの説明には納得できない。リニア計画沿線で私が出会った酪農家、シイタケ栽培農家、酒蔵などは一様に「もし沢水や地下水が使えなくなったら廃業だ」と心からの心配を吐露した。
問題は、JR東海がそれらの人々の元下に話し合いにも訪れないことだ。「あまりにも誠意がない」と憤る人たちは多い。
一般市民に対してだけではない。JR東海は、静岡県という大きな自治体の意向も軽視している。
前述の環境影響評価書において、JR東海がほとんど唯一具体的な数値で水枯れを予測した土地がある。静岡県だ。
静岡県の最北部はほぼ無人の南アルプス地帯。リニアはここを11kmの距離でトンネル通過する。だが、JR東海は、その掘削工事の影響で、大井川が毎秒最大2トン減流すると予測したのだ。
驚いたのが、生活用水や農工業用水の水源を大井川とする下流の自治体だ。毎秒2トンは、下流7市63万人分の水利権量に匹敵するからだ。
7市の一つ、牧之原市の西原茂樹市長(当時)はすぐに動いた。2013年11月、JR東海に「大井川の流量維持を求める」との意見書を提出した。西原市長の訴えは明快だ。
「戦後、発電のためのダムがいくつもできて取水量が増え、大井川は『河原砂漠』となりました。だが数十年の住民運動で、河川維持のための放流が実現、やっと『毎秒0.43トン』を本流に戻したのです。今回一気に毎秒2トン減少とは冗談ではない」
県もこれを問題視したことで、JR東海は「トンネルの掘削地点から湧水を取水し、導水トンネルを新設して、11km下流に放流し水量を維持する」との案を公表した。ところが、それでも毎秒0.7トン減少するとの試算に、大井川を水源とする10市町村の首長は「納得できない」と、2017年3月、JR東海に「大井川の流量確保を求める要望書」を提出。直後の4月3日、川勝平太知事も「全水量を確実に大井川に戻すことを表明するように」との意見をJR東海に提出したが、JR東海は、4月27日、「影響の程度をできる限り低減する」と回答しただけだった。川勝知事は「進展がない」と、引き続き全量回復を求める構えを示している。
おそらく、県の許可がなければJR東海は県での工事を遂行できない。だが、川勝知事を不快にさせたのは、県の意向を無視して、JR東海が同年10月にゼネコンと工事契約を締結したことだ。JR東海と静岡県知事とのやりとりは目が離せない状況になっている。
JR東海に政府は財投3兆円を融資
こうした残土や水枯れに加え、リニア開通が遅れるもう一つの要因として「資金」がある。
JR東海は2007年末、リニアを「自己資金で建設する」と表明し、経済界やリニア通過予定の都県を驚かせた。第一期工事となる品川―名古屋間だけで5兆5000億円だ。
国交省鉄道局は、東海道新幹線の収益をリニア建設に充当すれば、足りないのは3兆円と説明していたが、その3兆円をどう工面するのかに私は注目していた。というのは、たとえばJR東海の「平成28年3月期決算短信」を見ると、純資産額は2兆2199億円。つまり3兆円分の担保がない以上、銀行は貸し渋ると予測したからだ。
ところが、リニア計画(品川―名古屋間)を14年10月に国土交通省が事業認可すると、16年6月1日、安倍晋三首相が「リニア建設に財政投融資(以下、財投)3兆円を投入する」と表明し、また関係者を驚かせた。JR東海も同日、それを「歓迎する」と表明。JR東海は、自己資金から公的資金へと舵を切ったのだ。
財投とは、財務省が国債発行で得た資金を「財投機関」(政府系の特殊法人。35組織ある)に融資して大型事業などを実現する制度だ。
だが、JR東海は財投機関ではない。そこで政府・与党は、財投機関の一つで、新幹線建設などを行う「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」(以下、鉄道機構)に「JR東海への融資機能をも持たせる」という裏技というべき法改正を同年11月に断行した。その結果、鉄道機構は果たして3兆円をJR東海に融資した。しかも「無担保」かつ「30年据え置き」という異例の好条件だ。いったい誰がこの絵を描いたのか。
私が出会った準ゼネコンの社員はこう推測している。
「リニアに関して、2015年でのJR東海とゼネコンとの工事契約数は3件だけ。ところが、2016年から急増して今22件です。安倍首相が表明するからには、その何カ月も前から財投投入は政府内部で話し合われていたはずで、その情報があったからこそ、安心して受注できると読んだゼネコンが2016年から工事契約を結んだのでしょう。おそらく財投投入の絵を描いたのもゼネコンだと私は見ています」
リニア工事契約の談合疑惑に東京地検特捜部が動く
昨年(2017年)末、全マスコミは、リニア談合疑惑の報道を展開した。
報道を整理すると、JR東海は22の工区で建設業者と工事契約を交わしているが、JR東海が事前に入札額を漏らし、スーパーゼネコン4社が示し合わせたかのように均等受注していることで、東京地検特捜部が「独占禁止法違反」(不当な取引制限)の疑いで家宅捜索を遂行した。その結果、大林組と清水建設は談合を認め、鹿島建設と大成建設は「話し合いをしただけ」と談合を否認しているということだ。
この件は、東京地検が捜査中である以上、不必要なコメントは控えるが、私が関心を持つのは、果たして地検が、誰がこの不自然な3兆円もの財投投入に道筋をつけたかまでを捜査するかである。
というのは、某ゼネコンで働くベテラン社員や、『必要か、リニア新幹線』(岩波書店、2011年)などの著書でリニア計画を検証している橋山禮治郎氏は「リニアの品川―名古屋の工事は5兆5000億円では足りない」と断言しているからだ。
たとえば従来の新幹線でも、東北新幹線は当初予定の2倍の約3兆6000億円で、上越新幹線は3倍の1兆7000億円で竣工した。特にリニアでは最大の難所と言われる25kmの南アルプストンネルの掘削にどれだけの時間がかかるかで建設費は読めない。
もし工事の途中で資金ショートするようなことがあれば、再び財投を投入するのだろうか。
もちろん、財投は融資だからJR東海が返済すれば文句を言われる筋合いはない。
だが3兆円の融資が5兆円、10兆円と膨らんだとき、その返済は難しくならないか。
たとえば、例に出した東北新幹線と上越新幹線は財投で建設されている。これが旧国鉄の債務を最終的に28兆円に膨らませる一因ともなるのだが、注目すべきは28兆円のうちの約16兆円が財投による債務であることだ。28兆円のうち24兆円は今、国民の税金で償還されているのは周知の事実だ。
その反省から、国は財投による新幹線建設をやめ、今の「整備新幹線」方式(国が建設費の3分の2、地方自治体が3分の1を負担し、鉄道機構が建設した後、JR各社が鉄道機構に毎年線路使用料を払う方式)に切り替えたのに、それをまた財投頼みに戻すのだろうか。リニア事業で赤字が生じたら、その尻拭いは税金になるのだろうか。その犠牲と釣り合うだけの計画なのか、マスコミはもっと検証する必要がある。
JR東海の住民軽視の姿勢に立ち上がる市民
今、品川から名古屋までの1都6県(東京、神奈川、山梨、静岡、長野、岐阜、愛知)では、リニア計画に疑念を呈する市民団体はざっと30はある。
これら市民団体が生まれたのは、環境問題への懸念もそうだが、最大理由の一つが、JR東海の住民軽視の姿勢への憤りだった。
騒音、振動、景観、電磁波、生態系の劣化……。これら不安から、住民説明会で住民は真剣な質問を展開する。「水枯れは起こらないのですか?」「騒音はどれくらいになりますか?」「電磁波の影響はどれくらいですか?」。
これら質問にJR東海は常に「影響は小さいと予測します」「環境基準値内なのでご安心ください」といった具体性のない回答に終始。しかも、一度質問した人に再質問は許されず、まだ手が挙がっていても時間になればピタリと閉会する。「ふざけるな!」との怒号を耳にしたのは数知れない。
説明会以外でもJR東海の事務所では住民からの質問を受け付けてはいるが、訪問は3人までに限定され、どんな質問にも決して文書は渡してくれない。
市民から見ると情報隠しにも見えるこの姿勢に「このままではズルズル着工される」と各地で住民が立ち上がったのだ。
2016年5月、市民団体のネットワークである「リニア新幹線沿線住民ネットワーク」が奔走して集めた738人が、事業認可取り消しを求めて国土交通省を相手取り行政訴訟を起こしたのは当然の流れだった。
2016年9月から始まった裁判は現在、各地の原告による意見陳述の最中だが、早ければ今年、JR東海も「参考人」として出廷する可能性がある。なぜ「影響が小さい」と言えるのか、説明会では決して語られなかったその根拠を原告はJR東海に迫ることになる。この裁判は最後まで見届けたい。
紙面の関係で割愛したが、リニア計画では約5000人の地権者に対して土地や家屋の明け渡しが求められる予定だ。昨年末も、JR東海は神奈川県相模原市のマンションの全44世帯に立ち退きを求めた。そんな事例はこれから続々と出てくるはずだ。だが一方で、立ち木トラストや土地トラストなどで土地の明け渡しを拒む住民も現れている。
かつてない巨大工事に付随する甚大な環境問題と社会問題。抗う人々。マスコミが報道しなくても、私は最後までこの問題を追いかけたい。
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引用以上
もう三年以上前の記事だが、ジャーナリズムの手本となるべき優れた内容だ。補足説明はいらないだろう。以下も、同時期の記事だ。
リニア新幹線「2027年開業」が難しすぎる理由 開業遅れると全国のプロジェクトが大混乱?一井 純 : 東洋経済 2018/02/06
https://toyokeizai.net/articles/-/207112
2027年の開業まで残り10年を切ったリニア中央新幹線。すでに駅舎やトンネルなどの建設が進むほか、品川や名古屋といったリニア新駅の予定地周辺では、駅前再開発や観光PR、企業誘致など開業を見越した動きも盛んだ。沿線自治体は、新たな“夢の超特急”の到来を指折り数えて待っている。
ところが、ここへ来て2027年の開業に間に合わないのでは、という懸念が持ち上がっている。発端は、昨年末に浮上したリニア工事の談合疑惑だ。東京地検特捜部や公正取引委員会が大手ゼネコン各社を家宅捜索した。
捜査を受けても現場の工事が止まるわけではないが、JR東海が契約手続きの厳格化を表明するなど、今後締結される工事への影響を懸念する見方が上がっている。リスクを警戒して工事の受注に及び腰になるゼネコンが出てくる可能性もある。
「何が起こるか分からない」南アルプス
懸念材料は談合疑惑だけではない。2027年開業というスケジュールにはいくつものハードルが待ち受ける。第一の関門は、工事が滞りなく進むかどうかだ。
昨年12月末時点ですでに契約が締結されているリニアの工事契約を見ると、竣工が最も遅い工事は南アルプストンネル(静岡工区および長野工区)で2026年11月。開業予定のわずか1年前だ。この2つの工事以外にも開業ギリギリに竣工する大工事が散見されるほか、いまだ受注契約に至っていない工事も数多い。
トンネル工事に10年もの期間がかかるのは、南アルプスの掘削が「前人未踏の領域」(ゼネコン幹部)と言われるほどの難工事だからだ。土被り(地表からトンネルまでの距離)が最大で1400mという前例のない環境で、土中に何が眠っているかも「掘ってみなければ分からない」(別のゼネコン幹部)。
トンネル工事において、想定外のアクシデントに見舞われることは珍しくない。工事関係者の脳裏に焼き付いているのが、岐阜県内を通る東海北陸自動車道の「飛騨トンネル」だ。2005年の愛知万博に間に合うように工事がスタートしたものの、相次ぐトラブルによって工事が遅れに遅れた結果、開通したのは万博開催から3年も経った08年7月だった。
開通が遅れた最大の理由は、やはり土被りだった。土被りが深いほど、事前のボーリング調査でも地中の状態が正確に把握できないほか、堆積する土や岩の圧力(地圧)が増し、掘削機やトンネルの外周を固めるコンクリートを圧迫する。土被りが最大1000mにも達した飛騨トンネルでは、掘削中に地下水の噴出が相次いだほか、機械が地圧に押されて動かなくなってしまった。やむなく機械をその場で解体し、ダイナマイトで地盤を地道に爆破する手法へと変更した経緯がある。
南アルプストンネルの工事では初めからダイナマイトによる爆破の手法を採るが、地下水が噴出したり、コンクリートが地圧に負けてヒビが入ったりするリスクは残る。2026年までという長い工期設定に見えるが、悠長に構えていられる余裕はない。
何が起こるか分からない状況を予兆するかのように、昨年12月、リニアの沿線自治体である長野県中川村にて山の斜面が崩壊、流入した土砂が県道を塞ぐ事故があった。その後の記者会見にてJR東海は「現場近くで行われていたリニアのトンネル工事での発破作業」が事故を招いた可能性があると認めた。発破に伴う振動で地盤が緩んだ可能性があるという。出足からトラブルに遭った格好だ。
無事にトンネル工事が竣工しても、すぐにリニアが走るわけではない。2026年11月までの工事に含まれるのは「トンネルの開通のみ」(JR東海)で、リニアの線路ともいうべきガイドウェイの敷設はそこから新たに行うからだ。
ガイドウェイ敷設にはどれくらいの期間がかかるのか。1997年から走行実験が行われ、リニア開通後には本線としても使用される山梨実験線が参考になる。同実験線のガイドウェイ延伸を担当した鉄道建設・運輸施設整備支援機構によれば、全長24.4kmのガイドウェイの敷設工事にかかった期間は2011年3月から2013年1月まで。2年弱もの期間を要している。
新技術の試運転に「たった1年弱」
一般的に、線路の敷設はトンネルや高架橋といった土台の工事が完了してから始まる。だがリニアの場合、トンネル工事の竣工を気長に待っている時間はない。すると、トンネル開通を待たずして、掘った区間から順次ガイドウェイを敷設していくという「荒技」しかないが、狭いトンネルの中で掘削と敷設という異なる工事を互いに干渉させず進めるのは至難の業だ。JR東海はガイドウェイ工事については「時期、事業者ともに未定」としている。
ガイドウェイの敷設が完了すると、ようやくリニア車両が走れるようになる。だが、いきなり乗客を乗せて走ることはなく、一定期間にわたり試験走行を行う。
これまで開通した新幹線を例にとると、2016年3月に開業した北海道新幹線の新青森―新函館北斗間では、1年以上前の2014年12月から試験走行を開始している。15年3月に開通した北陸新幹線の長野―黒部宇奈月間でも2013年12月から試験走行を始めているなど、最低でも1年間は試験走行を行うのが通例だ。
だが、これは走行実績が豊富な新幹線の話。前例のない新技術ではより入念な試験が必要だ。昨年12月にデビューした特急「スーパーあずさ」の新型車両E353系の試験走行は、何と投入から2年半も前の2015年8月から始まっている。車両に導入した技術が走行区間にマッチするかどうかの確認に時間を要した。走行方式そのものが新技術のリニアにとっては、より慎重な試験走行が必要だろう。
試験走行のスケジュール感について、JR東海の柘植康英社長は「工事が完成した箇所から随時試験走行を行う」としている。トンネル工事が早期に竣工する区間であれば、ガイドウェイ設置後に十分な試験走行は行えるだろう。だが、南アルプストンネルは試験走行の期間が短くても大丈夫、という保障はどこにもない。
試験走行には車両の運行だけでなく信号やポイントの動作確認、さらにダイヤ通りに運行するための乗務員訓練なども含まれる。だとすれば、全線を通した試験走行の時間は十分確保する必要がある。短い期間で試験を行いつつ、安全性をどう担保するか。JR東海は難しい選択を迫られる。
万が一開業が2028年以降にずれこんだ場合、どのような影響が出てくるのか。まず考えられるのが、現時点で最短で2037年に予定されている大阪延伸への影響だ。当初の計画より開業時期を最大8年間も前倒しした大阪延伸だったが、スケジュールが圧迫されれば再び「後倒し」となる可能性もある。
開業が遅れた期間だけ本来リニアが稼ぎ出すはずだった運賃収入を逃すことになる。国からの低利融資である財政投融資が3兆円入るとはいえ、ただでさえリニア建設に伴う巨額負債を抱える同社にとって、これ以上財務に負担をかける事態は避けたい。
2027年に各地のプロジェクトが動き出す
開業の遅れで困るのは事業主のJR東海だけではない。沿線自治体の計画も、すべて27年を念頭に進んでいるからだ。リニア新駅が設置予定の神奈川県相模原市、山梨県甲府市、長野県飯田市、そして岐阜県中津川市では、リニア開業に連動した都市計画が進んでいるが、どれも2027年をベンチマークにしている。
甲府市の場合、昨年3月に「甲府市リニア活用基本構想」を策定した。計画期間は開業予定年である2027年。企業誘致やインバウンドの集客、さらに品川までリニアで25分という立地を生かし、都市圏からの移住定住をにらんだ政策を打ち出す。
とりわけ影響が大きいのが、始点の品川駅と終点の名古屋駅だ。品川駅周辺ではJR東日本や私鉄各社、デベロッパーなどによる再開発工事が多数計画されている。名古屋駅でも、名古屋市が同駅を国際ターミナル駅にする計画を立てている。もちろんリニアの開業が大前提だ。地元の名古屋鉄道も名鉄名古屋駅周辺の再開発に乗り出しているが、これも「駅機能についてはリニア中央新幹線開業時を目標」に進めるとしている。リニアの開業が遅れた場合、これらすべての計画の目算が狂う。
いくつものハードルを無事に乗り越え、予定通りリニアを開業できるか。JR東海にとって綱渡りの日々が始まる。
****************************************************************
引用以上
他にも、リニア新幹線の建設を批判する記事は、無数といえるほど出てくる。
https://kansai-sanpo.com/jr-tokai-linear05/
私が、最初にリニア計画に接したのは、たぶん、もう20年も前だが、この旗振り役であるJR東海会長、葛西敬之という名前を見て凍り付いたことを覚えている。
この男は、断じて許すことができない!
それは、私の神様の山である御嶽山の至高の原生林を大規模に皆伐してチャオをいうスキー場を作らせた。
この原生林皆伐の現場で、私は激しく憤った。その用地は、後楽園が百以上も入るくらい広大で、千古斧鉞の入らぬ、国内有数の稀少な原生林だった。
だが、そこはスキー場にしたって、極端に地の利が悪く、とうてい経営が成り立つとは思えなかった。
だが、地元や自然愛好家たちの激しい反対運動を押し切って建設が強行され、1998年、スキーブームも去った頃に開業した。
案の定、数年後には、JR東海は、チャオを安値で売り飛ばしたが、それを買った業者も倒産し、今は荒廃して雑草に覆われている。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%83%A3%E3%82%AA%E5%BE%A1%E5%B2%B3%E3%82%B9%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%AA%E3%82%BE%E3%83%BC%E3%83%88
葛西敬之という名前は、国鉄を解体した中曽根康弘と結びついている。葛西は中曽根の子飼いであり、中曽根引退後は安倍晋三の応援団長として君臨している。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%91%9B%E8%A5%BF%E6%95%AC%E4%B9%8B
いわば、竹中平蔵と並ぶ「政商」といっていいいが、この男が、国鉄解体後にJR東海に君臨し、旧国労組合員に対して行った仕打ちは凄まじい凶悪なものだった。
国労を腹の底から敵視し、組合員を不幸のどん底に追い込まねば納得しなかったのだ。
そして、葛西の指揮による、JR東海の事業は、前述のチャオのように失敗続きだった。最後の大失敗が、このリニア中央新幹線なのだ。
葛西の歩いた後は不毛の荒野となる。すべての人々が不幸になる。
リニアも、計画段階から、何か得体の知れない手によって進展を阻止されているかのように、次々に難題が立ちはだかっている。
だいたい、我々が仕事をするときでも、事業がうまくゆくときは、まるで、すべてが計画されたかのようにスムーズにことが運ぶものだ。
しかし、失敗するときは、最初から見えざる手によって、次々に妨害されているような失敗が続く。
このリニア新幹線計画は、何から何まで失敗続きであって、こんな事業がうまくいった試しはないのだ。
葛西敬之は、すべての人々の幸福を踏みにじり、歩んだ跡を不毛の荒野に変えて死んでゆく人物なのだ。それは親分である中曽根康弘に似ている。
私は、岐阜県駅建設予定地である中央西線、美濃坂本駅から4Km程度の場所=青木に、祖母から受け継いだ土地を所有している。
しかし、リニア新幹線の計画が発表された2011年頃から、今に至っても、地価の値上がりはほとんどない。
当初、陸軍射爆演習場だった青木は、祖母が60年前に購入してからも路線価は変わらず、最低の坪1000円のままで、実売価格も、ゴルフ場が隣にできたせいもあるが、ほぼ上がらない、たぶん坪3000円程度で売買されている。
実は、この土地は、祖母が「原野商法」に欺されて購入したものだった。
リニア岐阜県駅が徒歩1時間の場所にできるというのに、地価が上がらないのはなぜか?
おそらく、不動産関係者の間では、リニア中央新幹線の建設完工=開通を信用していないのではないだろうか?
現在居住しているのは、反対側で徒歩2時間の場所だが、そこも、まったく地価が上昇する気配がない。もちろん路線価は坪1000円のままだ。
リニア新幹線工事そのものは、すでに2年ほど前から進められ、瀬戸トンネルの掘削が、たぶん終わり、苗木トンネルに入っているはずなのだが、ダンプトラックの通行量が予想よりはるかに少ない。
駅舎周辺道路の整備も進んでいる。しかし、これは仮にリニアが幻に終わっても役立つものだから、美乃坂本駅整備事業として進められているのだろう。
私は、趣味的に中津川市の各地の土壌放射線量を測定したことがあるのだが、苗木トンネル付近は、日本最大級の自然放射線地帯である。少なくとも、311前は日本一環境放射線の高い場所だった。
昔は、どこを掘っても水晶トパーズが出土するといわれた地域だが、トリウム系花崗岩脈があり、もしも、ここを掘ったなら、ウラン鉱山なみの恐ろしい放射線土砂が莫大な量出るはずと予想していた。
どれくらい強いかというと、GM計で毎時1マイクロに近い線量が出ていた。環境放射線量の基準値は、福島事故後の改悪後でも毎時0.23マイクロシーベルト程度だから、 その数倍の線量があった。この残土は、完全に環境放射線基準値に抵触するものだ。人家の近くには決して捨てられない。
だから、私の知る限り、福岡町や付知町の花崗岩切り出し跡地や深い山の中に捨てているはずだ。おそらく地元に線量は伏せられているはずだ。
リニア新幹線は、大部分を地下100メートルに近い大深度にトンネルを掘るので、全体の残土は膨大なものになる。一説では東京ドーム4000杯分だという。JR東海は、この残土処理を一切計画に含めないまま、行き当たりばったりで工事を始めてしまったらしい。
だから、今になって高線量残土が出て処分地が定まらず大騒ぎをしたらしい。この処理に関する情報はJR東海側の説明で「問題ありません」というだけで、具体的な情報は完全に封鎖されたままだ。
実は、こうした長大トンネルを掘れば、必ず、地下水脈に当たる。この水脈は、地方自治体の水源を含んでいる場合が多いので、上水道や河川に水涸れを生じさせて大変な事態を引き起こす可能性がある。
また、地表面からトンネルまでの土や岩石の厚みを「土被り」というのだが、これも、南アルプス予定地では深さ1400メートルという、日本の土建業界が一度も経験したことのないような恐ろしい条件を掘り進まねばならないのに、データがないのだ。
https://trafficnews.jp/post/59456
さらにオマケとして、このトンネルは、南アルプス市から塩見岳の直下を経て、下伊那群大鹿村に抜けるのだが、そこには中央構造線そのものである国道152号線(秋葉街道)の巨大な壁がある。
それは、青崩峠・地蔵峠・分杭峠と呼ばれ、中央構造線による破砕帯のため、半世紀前から日本土木技術の総力を挙げても、未だに計画線が開通できない超難関地形なのだ。
つまり、中央構造線が絶えず動いていることにより、巨大な崩落帯、破砕帯ができて、トンネルを掘ろうとすると、どんどん移動していってしまい、崩落が起きる。
こんなところに、時速500Kmで走行するリニア新幹線のトンネルを掘ろうというのだ。これは人類史上でも屈指の難工事になり、戦後最悪の難工事といわれた鍋立山トンネルや清水トンネル、丹那トンネル、飛騨トンネルよりも、さらに悪条件が約束されている。
こうした難工事は、多くの場合、巨大断層が関係していて、鍋立山もフォッサマグナだった。
おそらく、完工するとしても、数十年かかるだろうし、完工したトンネルが中央構造線の活動によって、破断するリスクも極めて大きい。実は、日本の土建業界が最大の能力を持っていたのは、1980年前後である。今は、当時より機械は進化したが、能力は、むしろ劣っている。
ゆえに、トンネル工事の専門家の多くが、この大鹿村トンネルの完工を懐疑的に見つめている。
ネット上には、このことも含め、トンネル工事が難事業であることに加えて、JR東海の杜撰な計画により、漏水問題で進退窮まるだろうという解説がたくさん出ている。
いくつか紹介しておこう。
リニア中央新幹線は要らない!21世紀最大の負の遺産とならないか? 樫田秀樹 2018/03/30
https://imidas.jp/jijikaitai/a-40-127-18-03-g725
JR東海が進めるリニア中央新幹線は、国から3兆円の融資を得る超巨大事業になった。工事の入札ではスーパーゼネコン4社の談合が疑われ、大林組の社長が辞任、東京地検は鹿島建設と大成建設の幹部を2018年3月逮捕した。
工事に伴う膨大な残土、地下水脈を断ち切る水枯れ、住民の立ち退きなど、リニア建設が環境や社会生活に及ぼす影響はちゃんと検証されているのか? そもそもリニアが必要なのか? リニア新幹線を長年取材してきたジャーナリスト・樫田秀樹氏がその問題点を指摘する。
トンネルを掘った東京ドーム50杯分の残土をどこへ持って行くのか?
総工費9兆円。史上最大の鉄道事業となるJR東海の「リニア中央新幹線」は、時速500kmで、2027年に品川(東京都)から名古屋(愛知県)までを40分で、2037年には大阪までを67分で結ぶという計画だ(直行便の場合)。いずれも東海道新幹線の半分以下の移動時間だ。気になる料金も、東海道新幹線「のぞみ」の料金と比べると名古屋までなら700円、大阪までなら1000円だけ高くなるとされている。
新幹線とは縁がなく都心までの移動に数時間を要する山梨県や長野県では、「観光客が増える」「若い人も故郷にいながら都市通勤できる」と計画に期待する人は少なくない。計画沿線周辺の経済界もリニア開通による経済効果を兆単位だと熱い期待を寄せている。
だが、捕らぬ狸の皮算用ではないが、リニアを巡る諸状況を冷静に分析すれば、JR東海が目指すリニアの2027年開通は難しいと私は考える。同時に、JR東海の計画推進のやり方は環境破壊や地域破壊を招きかねないことも訴えたい。
その最大理由の一つは「残土」だ。
リニアでは、品川―名古屋間286kmのうちトンネル区間が86%も占めるが、その掘削工事では約5680万立方メートルという東京ドーム約50杯分もの膨大な残土が排出される。ところが、その処分先がまだ2割台しか決まっていない。つまり、処分先が決まらないことにはトンネルも掘れない。
事実、リニア計画(品川―名古屋間)は2014年に事業認可されたのに、JR東海は、準備工事(測量、資材ヤード建設、非常口建設など)は進めていても、未だに本丸であるトンネル建設にはほとんど着手できないでいる。
残土処分地が決まらない理由の一つに各地での反対運動がある。特に長野県。JR東海が処分先の候補地と睨んだ地域では、「沢の上流に置かれた残土が土砂崩れを起こしたら大変なことになる」との反対の声が上がっている。
たとえば、大鹿村を含む天竜川流域では1961年(昭和36年)に犠牲者136人を出す集中豪雨災害「三六(さぶろく)災害」が起きたが、その恐怖を今も忘れない松川町生田区の住民は反対組織を結成し、反対声明を出し、その姿勢に町も同調し、JR東海に「住民理解が得られなければ、残土置き場設置に(町として)反対の結論もあり得る」との要望書を提出した。豊丘村小園(おぞの)地区でもやはり土石流を恐れる住民が署名活動を展開し、多数の署名を集めた結果、JR東海は残土処分計画を撤回した。
これが税金を使う公共工事ならば、あらかじめ残土の処分先を決めないと事業は認可されないが、リニア計画はJR東海の民間事業であるためにそれは求められない。とはいえ、JR東海の見込みは甘かった。JR東海は「処分先は都県を窓口に調整する」との姿勢に終始し、ついに一カ所の処分先も決めないままで事業認可を受けたのだ。
だがその都県が膨大な残土を処分できる候補地をなかなか見つけられないという現状が、リニア工事の進捗を遅らせている。JR東海の計画では1年以上も前に掘削を始めているはずの南アルプストンネル工事にしても、未だに本格掘削には至っていないのだ。
トンネル工事で地下水脈が断ち切られ水枯れが起こる
「水枯れ」も無視できない問題だ。
2027年開通予定のリニアだが、じつは、1997年からリニア走行実験を運用してきた山梨県にある山梨リニア実験線(42.8km)は、そのままリニア営業本線を兼ねるため、リニアは実質的には7分の1は完成している。その実験線周辺で起きた問題の一つが水枯れだ。
実験線の建設工事が始まったのは1990年。実験線もその8割がトンネル工事だったため、各地で地下水脈が断ち切られ、その数年後から各地の川が枯れた。
たとえば、大月市朝日小沢地区では、1994年に簡易水道の水源の沢が枯れた。2011年には、上野原市無生野(むしょうの)地区の棚の入沢(たなのいりさわ)が枯れた。
ひとたび水枯れと工事との因果関係が認められれば、JR東海は地元に代替井戸や貯水タンクを設置する補償措置を講じる。ただし、国土交通省の通知「公共事業に係る工事の施工に起因する水枯渇等により生ずる損害等に係る事務処理要領の制定について」に基づき、補償期間は最大で30年。つまり、31年目からは自分たちで何とかしろということだ。
この意向に無生野地区の若者である有馬孔志さんは「僕らはあの川で遊んで育った。補償も中途半端だし、何よりもあのうまい水や魚たちを返してほしい」と不快感を露わにする。
今後のリニア工事でも、286kmのうち86%もがトンネル工事となる以上、長区間での水枯れが起こると予想されているが、JR東海は2014年に公表した「環境影響評価書」(環境アセスメントの結果報告や工事概要を記した報告書)や各地での住民説明会で、ほとんどの地区の水資源について「影響は小さいと予測します」と説明している。「覆工コンクリートや防水シートの設置、薬液注入などの施策」を実施するからと。
だが実験線での水枯れを知ってしまった住民はこの説明には納得できない。リニア計画沿線で私が出会った酪農家、シイタケ栽培農家、酒蔵などは一様に「もし沢水や地下水が使えなくなったら廃業だ」と心からの心配を吐露した。
問題は、JR東海がそれらの人々の元下に話し合いにも訪れないことだ。「あまりにも誠意がない」と憤る人たちは多い。
一般市民に対してだけではない。JR東海は、静岡県という大きな自治体の意向も軽視している。
前述の環境影響評価書において、JR東海がほとんど唯一具体的な数値で水枯れを予測した土地がある。静岡県だ。
静岡県の最北部はほぼ無人の南アルプス地帯。リニアはここを11kmの距離でトンネル通過する。だが、JR東海は、その掘削工事の影響で、大井川が毎秒最大2トン減流すると予測したのだ。
驚いたのが、生活用水や農工業用水の水源を大井川とする下流の自治体だ。毎秒2トンは、下流7市63万人分の水利権量に匹敵するからだ。
7市の一つ、牧之原市の西原茂樹市長(当時)はすぐに動いた。2013年11月、JR東海に「大井川の流量維持を求める」との意見書を提出した。西原市長の訴えは明快だ。
「戦後、発電のためのダムがいくつもできて取水量が増え、大井川は『河原砂漠』となりました。だが数十年の住民運動で、河川維持のための放流が実現、やっと『毎秒0.43トン』を本流に戻したのです。今回一気に毎秒2トン減少とは冗談ではない」
県もこれを問題視したことで、JR東海は「トンネルの掘削地点から湧水を取水し、導水トンネルを新設して、11km下流に放流し水量を維持する」との案を公表した。ところが、それでも毎秒0.7トン減少するとの試算に、大井川を水源とする10市町村の首長は「納得できない」と、2017年3月、JR東海に「大井川の流量確保を求める要望書」を提出。直後の4月3日、川勝平太知事も「全水量を確実に大井川に戻すことを表明するように」との意見をJR東海に提出したが、JR東海は、4月27日、「影響の程度をできる限り低減する」と回答しただけだった。川勝知事は「進展がない」と、引き続き全量回復を求める構えを示している。
おそらく、県の許可がなければJR東海は県での工事を遂行できない。だが、川勝知事を不快にさせたのは、県の意向を無視して、JR東海が同年10月にゼネコンと工事契約を締結したことだ。JR東海と静岡県知事とのやりとりは目が離せない状況になっている。
JR東海に政府は財投3兆円を融資
こうした残土や水枯れに加え、リニア開通が遅れるもう一つの要因として「資金」がある。
JR東海は2007年末、リニアを「自己資金で建設する」と表明し、経済界やリニア通過予定の都県を驚かせた。第一期工事となる品川―名古屋間だけで5兆5000億円だ。
国交省鉄道局は、東海道新幹線の収益をリニア建設に充当すれば、足りないのは3兆円と説明していたが、その3兆円をどう工面するのかに私は注目していた。というのは、たとえばJR東海の「平成28年3月期決算短信」を見ると、純資産額は2兆2199億円。つまり3兆円分の担保がない以上、銀行は貸し渋ると予測したからだ。
ところが、リニア計画(品川―名古屋間)を14年10月に国土交通省が事業認可すると、16年6月1日、安倍晋三首相が「リニア建設に財政投融資(以下、財投)3兆円を投入する」と表明し、また関係者を驚かせた。JR東海も同日、それを「歓迎する」と表明。JR東海は、自己資金から公的資金へと舵を切ったのだ。
財投とは、財務省が国債発行で得た資金を「財投機関」(政府系の特殊法人。35組織ある)に融資して大型事業などを実現する制度だ。
だが、JR東海は財投機関ではない。そこで政府・与党は、財投機関の一つで、新幹線建設などを行う「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」(以下、鉄道機構)に「JR東海への融資機能をも持たせる」という裏技というべき法改正を同年11月に断行した。その結果、鉄道機構は果たして3兆円をJR東海に融資した。しかも「無担保」かつ「30年据え置き」という異例の好条件だ。いったい誰がこの絵を描いたのか。
私が出会った準ゼネコンの社員はこう推測している。
「リニアに関して、2015年でのJR東海とゼネコンとの工事契約数は3件だけ。ところが、2016年から急増して今22件です。安倍首相が表明するからには、その何カ月も前から財投投入は政府内部で話し合われていたはずで、その情報があったからこそ、安心して受注できると読んだゼネコンが2016年から工事契約を結んだのでしょう。おそらく財投投入の絵を描いたのもゼネコンだと私は見ています」
リニア工事契約の談合疑惑に東京地検特捜部が動く
昨年(2017年)末、全マスコミは、リニア談合疑惑の報道を展開した。
報道を整理すると、JR東海は22の工区で建設業者と工事契約を交わしているが、JR東海が事前に入札額を漏らし、スーパーゼネコン4社が示し合わせたかのように均等受注していることで、東京地検特捜部が「独占禁止法違反」(不当な取引制限)の疑いで家宅捜索を遂行した。その結果、大林組と清水建設は談合を認め、鹿島建設と大成建設は「話し合いをしただけ」と談合を否認しているということだ。
この件は、東京地検が捜査中である以上、不必要なコメントは控えるが、私が関心を持つのは、果たして地検が、誰がこの不自然な3兆円もの財投投入に道筋をつけたかまでを捜査するかである。
というのは、某ゼネコンで働くベテラン社員や、『必要か、リニア新幹線』(岩波書店、2011年)などの著書でリニア計画を検証している橋山禮治郎氏は「リニアの品川―名古屋の工事は5兆5000億円では足りない」と断言しているからだ。
たとえば従来の新幹線でも、東北新幹線は当初予定の2倍の約3兆6000億円で、上越新幹線は3倍の1兆7000億円で竣工した。特にリニアでは最大の難所と言われる25kmの南アルプストンネルの掘削にどれだけの時間がかかるかで建設費は読めない。
もし工事の途中で資金ショートするようなことがあれば、再び財投を投入するのだろうか。
もちろん、財投は融資だからJR東海が返済すれば文句を言われる筋合いはない。
だが3兆円の融資が5兆円、10兆円と膨らんだとき、その返済は難しくならないか。
たとえば、例に出した東北新幹線と上越新幹線は財投で建設されている。これが旧国鉄の債務を最終的に28兆円に膨らませる一因ともなるのだが、注目すべきは28兆円のうちの約16兆円が財投による債務であることだ。28兆円のうち24兆円は今、国民の税金で償還されているのは周知の事実だ。
その反省から、国は財投による新幹線建設をやめ、今の「整備新幹線」方式(国が建設費の3分の2、地方自治体が3分の1を負担し、鉄道機構が建設した後、JR各社が鉄道機構に毎年線路使用料を払う方式)に切り替えたのに、それをまた財投頼みに戻すのだろうか。リニア事業で赤字が生じたら、その尻拭いは税金になるのだろうか。その犠牲と釣り合うだけの計画なのか、マスコミはもっと検証する必要がある。
JR東海の住民軽視の姿勢に立ち上がる市民
今、品川から名古屋までの1都6県(東京、神奈川、山梨、静岡、長野、岐阜、愛知)では、リニア計画に疑念を呈する市民団体はざっと30はある。
これら市民団体が生まれたのは、環境問題への懸念もそうだが、最大理由の一つが、JR東海の住民軽視の姿勢への憤りだった。
騒音、振動、景観、電磁波、生態系の劣化……。これら不安から、住民説明会で住民は真剣な質問を展開する。「水枯れは起こらないのですか?」「騒音はどれくらいになりますか?」「電磁波の影響はどれくらいですか?」。
これら質問にJR東海は常に「影響は小さいと予測します」「環境基準値内なのでご安心ください」といった具体性のない回答に終始。しかも、一度質問した人に再質問は許されず、まだ手が挙がっていても時間になればピタリと閉会する。「ふざけるな!」との怒号を耳にしたのは数知れない。
説明会以外でもJR東海の事務所では住民からの質問を受け付けてはいるが、訪問は3人までに限定され、どんな質問にも決して文書は渡してくれない。
市民から見ると情報隠しにも見えるこの姿勢に「このままではズルズル着工される」と各地で住民が立ち上がったのだ。
2016年5月、市民団体のネットワークである「リニア新幹線沿線住民ネットワーク」が奔走して集めた738人が、事業認可取り消しを求めて国土交通省を相手取り行政訴訟を起こしたのは当然の流れだった。
2016年9月から始まった裁判は現在、各地の原告による意見陳述の最中だが、早ければ今年、JR東海も「参考人」として出廷する可能性がある。なぜ「影響が小さい」と言えるのか、説明会では決して語られなかったその根拠を原告はJR東海に迫ることになる。この裁判は最後まで見届けたい。
紙面の関係で割愛したが、リニア計画では約5000人の地権者に対して土地や家屋の明け渡しが求められる予定だ。昨年末も、JR東海は神奈川県相模原市のマンションの全44世帯に立ち退きを求めた。そんな事例はこれから続々と出てくるはずだ。だが一方で、立ち木トラストや土地トラストなどで土地の明け渡しを拒む住民も現れている。
かつてない巨大工事に付随する甚大な環境問題と社会問題。抗う人々。マスコミが報道しなくても、私は最後までこの問題を追いかけたい。
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引用以上
もう三年以上前の記事だが、ジャーナリズムの手本となるべき優れた内容だ。補足説明はいらないだろう。以下も、同時期の記事だ。
リニア新幹線「2027年開業」が難しすぎる理由 開業遅れると全国のプロジェクトが大混乱?一井 純 : 東洋経済 2018/02/06
https://toyokeizai.net/articles/-/207112
2027年の開業まで残り10年を切ったリニア中央新幹線。すでに駅舎やトンネルなどの建設が進むほか、品川や名古屋といったリニア新駅の予定地周辺では、駅前再開発や観光PR、企業誘致など開業を見越した動きも盛んだ。沿線自治体は、新たな“夢の超特急”の到来を指折り数えて待っている。
ところが、ここへ来て2027年の開業に間に合わないのでは、という懸念が持ち上がっている。発端は、昨年末に浮上したリニア工事の談合疑惑だ。東京地検特捜部や公正取引委員会が大手ゼネコン各社を家宅捜索した。
捜査を受けても現場の工事が止まるわけではないが、JR東海が契約手続きの厳格化を表明するなど、今後締結される工事への影響を懸念する見方が上がっている。リスクを警戒して工事の受注に及び腰になるゼネコンが出てくる可能性もある。
「何が起こるか分からない」南アルプス
懸念材料は談合疑惑だけではない。2027年開業というスケジュールにはいくつものハードルが待ち受ける。第一の関門は、工事が滞りなく進むかどうかだ。
昨年12月末時点ですでに契約が締結されているリニアの工事契約を見ると、竣工が最も遅い工事は南アルプストンネル(静岡工区および長野工区)で2026年11月。開業予定のわずか1年前だ。この2つの工事以外にも開業ギリギリに竣工する大工事が散見されるほか、いまだ受注契約に至っていない工事も数多い。
トンネル工事に10年もの期間がかかるのは、南アルプスの掘削が「前人未踏の領域」(ゼネコン幹部)と言われるほどの難工事だからだ。土被り(地表からトンネルまでの距離)が最大で1400mという前例のない環境で、土中に何が眠っているかも「掘ってみなければ分からない」(別のゼネコン幹部)。
トンネル工事において、想定外のアクシデントに見舞われることは珍しくない。工事関係者の脳裏に焼き付いているのが、岐阜県内を通る東海北陸自動車道の「飛騨トンネル」だ。2005年の愛知万博に間に合うように工事がスタートしたものの、相次ぐトラブルによって工事が遅れに遅れた結果、開通したのは万博開催から3年も経った08年7月だった。
開通が遅れた最大の理由は、やはり土被りだった。土被りが深いほど、事前のボーリング調査でも地中の状態が正確に把握できないほか、堆積する土や岩の圧力(地圧)が増し、掘削機やトンネルの外周を固めるコンクリートを圧迫する。土被りが最大1000mにも達した飛騨トンネルでは、掘削中に地下水の噴出が相次いだほか、機械が地圧に押されて動かなくなってしまった。やむなく機械をその場で解体し、ダイナマイトで地盤を地道に爆破する手法へと変更した経緯がある。
南アルプストンネルの工事では初めからダイナマイトによる爆破の手法を採るが、地下水が噴出したり、コンクリートが地圧に負けてヒビが入ったりするリスクは残る。2026年までという長い工期設定に見えるが、悠長に構えていられる余裕はない。
何が起こるか分からない状況を予兆するかのように、昨年12月、リニアの沿線自治体である長野県中川村にて山の斜面が崩壊、流入した土砂が県道を塞ぐ事故があった。その後の記者会見にてJR東海は「現場近くで行われていたリニアのトンネル工事での発破作業」が事故を招いた可能性があると認めた。発破に伴う振動で地盤が緩んだ可能性があるという。出足からトラブルに遭った格好だ。
無事にトンネル工事が竣工しても、すぐにリニアが走るわけではない。2026年11月までの工事に含まれるのは「トンネルの開通のみ」(JR東海)で、リニアの線路ともいうべきガイドウェイの敷設はそこから新たに行うからだ。
ガイドウェイ敷設にはどれくらいの期間がかかるのか。1997年から走行実験が行われ、リニア開通後には本線としても使用される山梨実験線が参考になる。同実験線のガイドウェイ延伸を担当した鉄道建設・運輸施設整備支援機構によれば、全長24.4kmのガイドウェイの敷設工事にかかった期間は2011年3月から2013年1月まで。2年弱もの期間を要している。
新技術の試運転に「たった1年弱」
一般的に、線路の敷設はトンネルや高架橋といった土台の工事が完了してから始まる。だがリニアの場合、トンネル工事の竣工を気長に待っている時間はない。すると、トンネル開通を待たずして、掘った区間から順次ガイドウェイを敷設していくという「荒技」しかないが、狭いトンネルの中で掘削と敷設という異なる工事を互いに干渉させず進めるのは至難の業だ。JR東海はガイドウェイ工事については「時期、事業者ともに未定」としている。
ガイドウェイの敷設が完了すると、ようやくリニア車両が走れるようになる。だが、いきなり乗客を乗せて走ることはなく、一定期間にわたり試験走行を行う。
これまで開通した新幹線を例にとると、2016年3月に開業した北海道新幹線の新青森―新函館北斗間では、1年以上前の2014年12月から試験走行を開始している。15年3月に開通した北陸新幹線の長野―黒部宇奈月間でも2013年12月から試験走行を始めているなど、最低でも1年間は試験走行を行うのが通例だ。
だが、これは走行実績が豊富な新幹線の話。前例のない新技術ではより入念な試験が必要だ。昨年12月にデビューした特急「スーパーあずさ」の新型車両E353系の試験走行は、何と投入から2年半も前の2015年8月から始まっている。車両に導入した技術が走行区間にマッチするかどうかの確認に時間を要した。走行方式そのものが新技術のリニアにとっては、より慎重な試験走行が必要だろう。
試験走行のスケジュール感について、JR東海の柘植康英社長は「工事が完成した箇所から随時試験走行を行う」としている。トンネル工事が早期に竣工する区間であれば、ガイドウェイ設置後に十分な試験走行は行えるだろう。だが、南アルプストンネルは試験走行の期間が短くても大丈夫、という保障はどこにもない。
試験走行には車両の運行だけでなく信号やポイントの動作確認、さらにダイヤ通りに運行するための乗務員訓練なども含まれる。だとすれば、全線を通した試験走行の時間は十分確保する必要がある。短い期間で試験を行いつつ、安全性をどう担保するか。JR東海は難しい選択を迫られる。
万が一開業が2028年以降にずれこんだ場合、どのような影響が出てくるのか。まず考えられるのが、現時点で最短で2037年に予定されている大阪延伸への影響だ。当初の計画より開業時期を最大8年間も前倒しした大阪延伸だったが、スケジュールが圧迫されれば再び「後倒し」となる可能性もある。
開業が遅れた期間だけ本来リニアが稼ぎ出すはずだった運賃収入を逃すことになる。国からの低利融資である財政投融資が3兆円入るとはいえ、ただでさえリニア建設に伴う巨額負債を抱える同社にとって、これ以上財務に負担をかける事態は避けたい。
2027年に各地のプロジェクトが動き出す
開業の遅れで困るのは事業主のJR東海だけではない。沿線自治体の計画も、すべて27年を念頭に進んでいるからだ。リニア新駅が設置予定の神奈川県相模原市、山梨県甲府市、長野県飯田市、そして岐阜県中津川市では、リニア開業に連動した都市計画が進んでいるが、どれも2027年をベンチマークにしている。
甲府市の場合、昨年3月に「甲府市リニア活用基本構想」を策定した。計画期間は開業予定年である2027年。企業誘致やインバウンドの集客、さらに品川までリニアで25分という立地を生かし、都市圏からの移住定住をにらんだ政策を打ち出す。
とりわけ影響が大きいのが、始点の品川駅と終点の名古屋駅だ。品川駅周辺ではJR東日本や私鉄各社、デベロッパーなどによる再開発工事が多数計画されている。名古屋駅でも、名古屋市が同駅を国際ターミナル駅にする計画を立てている。もちろんリニアの開業が大前提だ。地元の名古屋鉄道も名鉄名古屋駅周辺の再開発に乗り出しているが、これも「駅機能についてはリニア中央新幹線開業時を目標」に進めるとしている。リニアの開業が遅れた場合、これらすべての計画の目算が狂う。
いくつものハードルを無事に乗り越え、予定通りリニアを開業できるか。JR東海にとって綱渡りの日々が始まる。
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引用以上
他にも、リニア新幹線の建設を批判する記事は、無数といえるほど出てくる。
https://kansai-sanpo.com/jr-tokai-linear05/
私が、最初にリニア計画に接したのは、たぶん、もう20年も前だが、この旗振り役であるJR東海会長、葛西敬之という名前を見て凍り付いたことを覚えている。
この男は、断じて許すことができない!
それは、私の神様の山である御嶽山の至高の原生林を大規模に皆伐してチャオをいうスキー場を作らせた。
この原生林皆伐の現場で、私は激しく憤った。その用地は、後楽園が百以上も入るくらい広大で、千古斧鉞の入らぬ、国内有数の稀少な原生林だった。
だが、そこはスキー場にしたって、極端に地の利が悪く、とうてい経営が成り立つとは思えなかった。
だが、地元や自然愛好家たちの激しい反対運動を押し切って建設が強行され、1998年、スキーブームも去った頃に開業した。
案の定、数年後には、JR東海は、チャオを安値で売り飛ばしたが、それを買った業者も倒産し、今は荒廃して雑草に覆われている。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%83%A3%E3%82%AA%E5%BE%A1%E5%B2%B3%E3%82%B9%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%AA%E3%82%BE%E3%83%BC%E3%83%88
葛西敬之という名前は、国鉄を解体した中曽根康弘と結びついている。葛西は中曽根の子飼いであり、中曽根引退後は安倍晋三の応援団長として君臨している。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%91%9B%E8%A5%BF%E6%95%AC%E4%B9%8B
いわば、竹中平蔵と並ぶ「政商」といっていいいが、この男が、国鉄解体後にJR東海に君臨し、旧国労組合員に対して行った仕打ちは凄まじい凶悪なものだった。
国労を腹の底から敵視し、組合員を不幸のどん底に追い込まねば納得しなかったのだ。
そして、葛西の指揮による、JR東海の事業は、前述のチャオのように失敗続きだった。最後の大失敗が、このリニア中央新幹線なのだ。
葛西の歩いた後は不毛の荒野となる。すべての人々が不幸になる。
リニアも、計画段階から、何か得体の知れない手によって進展を阻止されているかのように、次々に難題が立ちはだかっている。
だいたい、我々が仕事をするときでも、事業がうまくゆくときは、まるで、すべてが計画されたかのようにスムーズにことが運ぶものだ。
しかし、失敗するときは、最初から見えざる手によって、次々に妨害されているような失敗が続く。
このリニア新幹線計画は、何から何まで失敗続きであって、こんな事業がうまくいった試しはないのだ。
葛西敬之は、すべての人々の幸福を踏みにじり、歩んだ跡を不毛の荒野に変えて死んでゆく人物なのだ。それは親分である中曽根康弘に似ている。
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